金利上昇の影響を受けるアメリカの住宅市場~変動金利タイプは増えたがなお1割程度~

2023年09月04日

(小林 正宏) 不動産市場・不動産市況

■要旨
 
  • アメリカでは住宅ローンは返済期間30年、全期間固定金利の「30年固定」が一般的と言われる。足元では変動金利タイプの利用も若干増えているが、なお1割未満である。利上げに伴い、30年固定の住宅ローン金利も急上昇しており、フレディマック(連邦住宅抵当貸付公社)が週次で発表している全米平均値は8月第4週に7.23%と2001年6月第1週以来の高い水準となった。
     
  • 金利上昇の影響もあり、新築住宅着工戸数は2022年5月から2023年4月まで前年同月比でマイナスが一年間続いた。販売戸数については新築と比較して中古が大きく減少している。金利上昇局面で、過去に低利の固定金利で借りた利用者がローンを手放したくなく、中古の売り物件が出にくいことも一因と言われるが、新築ほど中古の価格調整が進んでおらず、相対的に中古の割高感が強いことも影響していると思われる。
     
  • 「持家」か「賃貸」か、という観点から、住宅価格と家賃を比較すると、概ねパラレルに動いてきたが、住宅ローンの返済額と家賃を比較すると、金利上昇の影響で賃貸の方が相対的に有利になっている。アメリカでは可処分所得も順調に伸びているが、この1、2年は住宅価格と金利の上昇により、住宅取得能力が過去に例を見ない速度で低下した。足元では新築は価格下落により取得能力が若干反発に転じているが、今後のFRBの金融政策が注視される。


■目次

1. アメリカの住宅ローン金利の状況
2. アメリカの住宅市場の状況
3. 持家か賃貸か?

金融研究部   客員研究員

小林 正宏(こばやし まさひろ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
国内外の住宅・住宅金融市場

経歴

【職歴】
 1988年 住宅金融公庫入社
 1996年 海外経済協力基金(OECF)出向(マニラ事務所に3年間駐在)
 1999年 国際協力銀行(JBIC)出向
 2002年 米国ファニーメイ特別研修派遣
 2022年 住宅金融支援機構 審議役
 2023年 6月 日本生命保険相互会社 顧問
      7月 ニッセイ基礎研究所 客員研究員(現職)

【加入団体等】
・日本不動産学会 正会員
・資産評価政策学会 正会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科 非常勤講師

【著書等】
・サブプライム問題の正しい考え方(中央公論新社、2008年、共著)
・世界金融危機はなぜ起こったのか(東洋経済新報社、2008年、共著)
・通貨で読み解く世界経済(中央公論新社、2010年、共著)
・通貨の品格(中央公論新社、2012年)など

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