その意味を考察する前に、推しのイメージカラーについて触れる必要がある。1970年代に散見されたアイドルファンの団体である「親衛隊」
8は独自のグッズや方法でお気に入りのアイドルを応援していた。その系譜を特にジャニーズファンは踏んでおり、自身の応援するアイドルの色を基調としたファッションやうちわ、ブロマイドを装備してコンサートに行く傾向がある
9。これには、自身が誰のファンであるのかという識別機能や、同じ対象を応援する他のファン(愛好家、同担)と交流を持ちたくないという姿勢を指す「同担拒否」
10を可視化するなどの機能を擁している
11。
また、今やアーティストのコンサートの定番となったサイリウムも、特にグループアイドルにおいては自分が誰を応援しているのかを、アイドル本人に対してアピールする上でも「色」はオタクとアーティストをつなぐ重要な要素となっていった。現実に存在するアーティストに限らず、マンガやアニメの世界においても登場するキャラクターの服装や髪の色からイメージカラーが設定されることが多く、例えば赤塚不二夫生誕80周年記念として制作され、2015年10月に放送スタートした大ヒットTVアニメ「おそ松さん」は、登場する6つ子それぞれイメージカラーが設定されており、公式グッズのみならず、おそ松さんファンへのアプローチを意識したグッズや日用品においてもそれぞれのイメージカラーが実装され、「それぞれの色を揃えました」「6つ子ファン必見」といったポップでファンの購買意欲を刺激していた。
この頃から元々アイドルファン界隈を中心に行われていた「色」による識別は、アニメやマンガ市場においても強く意識されるようになり
12、持ち歩くカバンや持ち物、服装、自身の髪の色に至るまで自分がどの色が好きか=どのキャラクターが好きか、というメッセージを他人に仄めかしたり、その色に囲まれている=推しキャラクターの概念に囲まれているから幸せ、安心するといった安寧感が期待されており、推し活をする者にとって自分の好きなキャラクターの色を消費することは、推しと自身との間に
自分だけの意味を見出す要素になっていると筆者は考える。
また、アクリルスタンドやぬいぐるみ、ブロマイド等を持ち歩いて、旅行先で写真に収めたり、食事する際に机に置いておくと言った行動は以前よりオタクの中では散見されていた。これはいつでも推しが近くにいてくれるという喜びや、日常の何気ない1シーンも推しがいれば華やかになるといったことが期待されており
13、推しという存在が彼らにとってなくてはならないモノであるという事を象徴している行動であると言える。このような背景から自分の推しを見栄え良く撮影できる施設や推しのイメージカラーのフードと写真を撮るという行為は、ある意味
誰かを推しているからこそできる特権でもあり、そのような場所に足を運ぶことで、誰かを推しているという事実に喜びを得たり、色を通して推しとの間に繋がりを見出しているのだと、筆者は考える。これも、前述した自分の好きなモノに対して向き合うという意味での推し活同様に、直接コンテンツを消費するわけではないが、自分なりの意味を見出し、そこでの体験が精神的充足に繋がっているのだろう。