2| 地域別の状況
次に、地域別の状況を見ていきたい(図表6と図表7)。「北海道」では、5類移行後、「電車やバス」の利用層が7ポイント増えたが、利用頻度は低下傾向だった。また、「自家用車」の利用層も3.9ポイント増えた。つまり、全体的に人の移動がやや活発になり始めており、旅行など特定の機会には、自家用車ではなく、公共交通を利用する人が増えたと考えられる。
因みに、2でみたV-RESASの移動人口では、北海道は、7月第1週はコロナ前の同週に比べてプラス5.4%と高い数値が出ている。これは、基礎研の調査では回答者の居住地によって地域分けをしているのに対し、V-RESASには観光等で北海道を訪れた人が含まれるため、より上向いた数値が出ていると考えられる。
図表6と図表7に戻ると、「東北地方」では、5類移行後、「電車やバス」の利用層が微増した。中でも「月3回以下」が微増した。「自家用車」も「週1~4回」が少し増えており、人の動き自体は若干、活発になり始めているようだ。
「関東地方」では、「電車やバス」で「週5回以上」が2.8ポイント増加した。基礎研の同じ調査から、働く人の出社状況を見て見ると、2023年6月時点で、関東地方の出社頻度は「週5回以上」が1年前に比べて7.2ポイント上がり、全体平均よりも伸び率が高かった。このような出社頻度の上昇が、バスや電車の利用増加につながったと考えられる。「自家用車」も「週1~4回」が1.8ポイント上昇するなど、わずかに頻度が上がる傾向が見られた。
「中部地方」では、「電車やバス」の利用層が5.1ポイント増加し、自家用車についても、やや頻度が上がった(「週1~4回」が4.1ポイント増加など)。5類移行後、公共交通とマイカーのいずれも、やや利用が増加していると言える。
「近畿地方」では、「電車やバス」については「週5回以上」が2.3ポイント増えた。関東と同様に、同じ調査で出社頻度を確認すると、「週5回以上」が1年前に比べて7ポイント上昇しており、これが要因だと考えられる。「自家用車」はわずかに利用頻度が低下していた(「週5回以上」が2.3ポイント減少、「週1~4回」が1.8ポイント減少など)。
「中国地方」では、特に大きな変化は見られない。「四国地方」では、「自家用車」の利用頻度がやや上がっており(「週5回以上」が7.6ポイント上昇)、5類移行後に移動が活発になっている。また、2023年6月時点の状況について、全地域ブロックを比べると、四国地方では、5類移行後も「未利用・非該当」が6割に上り、他に比べて突出して利用していない人が多い。これは、公共交通への回避傾向が続いていると言うよりは、公共交通サービスの供給不足が要因にあると考えられる。
「九州地方」では、「電車やバス」の利用層が6.5ポイント増加し、中でも「月3回以下」が10ポイント以上増加した。自家用車については大きな変化は見られない。九州地方では、5類移行後、公共交通の利用がじわりと増えたと言える。
以上を整理すると、5類移行後、「マイカーが減って公共交通が増える」(公共交通への逆戻り)、あるいは「公共交通が減ってマイカーが増える」(マイカーへのシフト加速)といった、交通モードの顕著な変更は見られなかった。唯一、近畿地方では公共交通が少し増え、マイカーの利用頻度が少し減少したが、交通モードの転換というほどではない。大まかに言えば、5類移行後に人の移動が活発になって、一方の利用頻度が上がれば、もう一方の利用頻度も上がる、というように、公共交通とマイカーには連動した傾向が見られた。