日本の主要6都市のオフィス出社率は、都市により水準が異なるものの、概ね同じトレンドを辿ってきた。コロナ禍における出社率の推移は、5つの局面に分けて見ることができる(図1、付表 1)。
第1の局面は、2020年4月から5月にかけてで、初の緊急事態宣言が発令され、未知の感染症である新型コロナウイルスへの対策として在宅勤務に半ば強制的に移行した結果、出社率が大幅に低下した。コロナ禍において最も出社率が落ち込んだ時期であり、東京36.1%、大阪40.4%、名古屋40.4%、福岡41.7%、札幌50.0%、仙台50.2%を記録した。
第2の局面は、2020年6月から2021年9月までで、新規感染者数の変動や政府の対策により、出社率が一定の範囲内で上下した。各都市のレンジは、東京49.5%~64.9%、大阪50.8%~72.2%、福岡51.4%~72.9%、名古屋52.6%~75.1%、札幌51.2%~76.3%、仙台55.8%~79.0%である
8。
第3の局面は、2021年10月から2022年1月にかけてで、ワクチン接種の進展と緊急事態宣言の解除によりオフィス回帰が進み、出社率が上昇した。具体的には、東京で79.8%、大阪で86.1%、福岡で87.2%、名古屋で92.1%、仙台で92.4%、札幌で93.2%にまで達した
9。この時期、特に名古屋、仙台、札幌では、コロナ禍前の水準に近い出社率を見せた。
第4の局面は、2022年2月から2023年2月にかけてである。変異株の拡大を背景に新規感染者数が急増したことで、再度オフィス出社率が低下した。特に、過去最大の新規感染者数を記録した第7波では、2022年7月から8月にかけて東京62.7%、札幌66.6%、大阪67.0%、福岡68.3%、仙台68.7%、名古屋69.8%にまで出社率は低下した。この時期、それまで出社率が相対的に低かった東京(第3局面のピーク比▲17.1%)、福岡(▲18.9%)、大阪(▲19.1%)と比べ、出社率が高かった名古屋(▲22.3%)、仙台(▲23.7%)、札幌(▲26.6%)では、オフィス出社率の低下が顕著であった。強い感染力を持つ変異株が全国的に猛威を振るった結果、地方主要都市でも在宅勤務の傾向が強まったことが伺える。
最後の、第5の局面は、2023年2月から現在までである。この期間は、官民ともにポストコロナへの移行が明確となった時期である。2023年4月最終週のオフィス出社率は、東京76.2%、福岡79.5%、大阪81.3%、札幌82.1%、仙台83.6%、名古屋84.2%となっている。第8波の感染拡大が収束した2023年1月以降、観光地や繁華街の人出が回復する一方で、オフィスへの回帰は比較的緩やかであった。
これらの結果は、コロナ禍が長期化したことで、在宅とオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方が既にある程度定着していることを示唆している。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、働き方のルールを変更する企業も増えてきており、今後の推移に注目が集まる
10。