上記のように、先代システムの課題であった 図表3の1(住基カードの交付率が低かったため)と2(申請へのハードルが高いため)については、マイナンバーカードやNFC対応スマートフォンの普及と、マイナポータルの存在により、大きく改善した。
しかし、図表3の3(オンラインで申請が完結しない)は、なお課題として残る。特に、新規でパスポートを申請する際に、オンラインのメリットをフルに享受できない。現状では、オンラインの新規申請は一部の自治体(脚注1参照)に限られる上、申請後に自治体への戸籍謄本(原本)の郵送が必要になる。政府は、2023年度から開始される戸籍電子証明書の仕組みを利用して、2024年度を目途に戸籍謄本(原本)の提出省略を実現し、新規申請もオンラインで完結する仕組みの構築を目指している。
大きく改善したとは言え、図表3の2(申請へのハードルが高いため)についても改良の余地がある。例えば、内閣府大臣官房制度担当室の「マイナポータルのデザイン・機能に関するご意見まとめ
5」が参考になる。これによれば、マイナポータルの表示情報の過多や、自分が使いたい機能がどこにあるのか分からないなど、デザインの分かりにくさに関して利用者からの指摘が目立つ。また、マイナポータルの利用には、慣れない操作も多く求められる。例えばマイナポイント第2弾の際、パスワード入力やマイナンバーカードの読取を何度も求められる。オンライン上の本人確認など、手続き上必要な操作ではあるが、煩わしさは否めない。
これら課題への対応として、デジタル庁は2022年12月にマイナポータル実証α版を公開した。これは、マイナポータルのサイト設計やデザインを見直し、より使いやすく分かりやすいシステムを作るための、いわばプロトタイプのマイナポータルだ。利用者からのフィードバックをもとに改善を行うことで、オンライン申請のハードルが一層下がることが期待される。
また、本年5月からはマイナンバーカード機能のAndroid OSスマートフォンへの搭載が始まる。マイナンバーカード内の電子証明書がスマートフォンに取り込まれ、マイナポータル上の手続きにおいて、本人確認のためのマイナンバーカード読取やパスワード入力が不要になる
6。顔や指紋などの生体認証を用いたログインが可能になり、手間が大きく省ける。尚、日本におけるモバイルOS別のシェアでAndroid OSと拮抗するiPhoneのiOSへのマイナンバーカード機能搭載については、現在、検討中にある。
5 「マイナポータルの新しいデザイン・機能に関するご意見まとめ」. 内閣府大臣官房番号制度担当室. 2021-01-15.
6 「マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載に関する検討会(第1回)行政機関・民間事業者向け説明資料」.デジタル庁 2022-08-03