貿易統計23年2月-中国向けを中心に輸出の低迷が続く

2023年03月16日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.貿易赤字(季節調整値)は縮小

財務省が3月16日に公表した貿易統計によると、23年2月の貿易収支は▲8,977億円の赤字となったが、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲10,693億円、当社予想は▲9,515億円)を下回る結果となった。輸出が前年比6.5%(1月:同3.5%)と前月から伸びを高める一方、円安、原油高の一服により輸入が前年比8.3%(1月:同17.5%)と伸びが大きく鈍化したが、輸入の伸びが輸出の伸びを上回ったため、貿易収支は前年に比べ▲1,862億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲7.9%(1月:同▲10.9%)、輸出価格が前年比15.6%(1月:同16.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲7.8%(1月:同▲2.3%)、輸入価格が前年比17.4%(1月:同20.3%)であった。
季節調整済の貿易収支は▲11,907億円と19ヵ月連続の赤字となったが、1月の▲18,233億円から赤字幅が縮小した。輸出が前月比4.4%と4ヵ月ぶりに増加する一方、輸入が同▲3.0%と4ヵ月連続で減少した。
23年2月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=87.8ドル(当研究所による試算値)と、1月の88.3ドルからほぼ横ばいとなった。足もとの原油価格(ドバイ)は、70ドル台後半まで下落しており、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は3月以降も80ドル台後半で推移することが見込まれる。

原油価格の下落、円安の一服を受けて輸入価格が低下する一方、海外経済の減速を背景に輸出の低迷が続くことから、先行ききの貿易収支(季節調整値)は現状程度の赤字が続くことが予想される。

2.輸出は中国向けが持ち直す一方、欧米向けは低迷が続く見込み

23年2月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲1.3%(1月:同▲3.4%)、EU向けが前年比1.4%(1月:同▲4.3%)、アジア向けが前年比▲12.8%(1月:同▲15.4%)、うち中国向けが前年比▲27.2%(1月:同▲30.6%)となった。

23年2月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比5.4%(1月:同▲3.8%)、EU向けが前月比0.5%(1月:同▲6.6%)、アジア向けが前月比4.6%(1月:同▲4.8%)、うち中国向けが前月比6.4%(1月:同▲9.2%)、全体では前月比1.8%(1月:同▲2.4%)となった。
アジア向け、中国向けは春節の時期のずれ(2022年は2/1~、2023年は1/22~)の影響で、実勢よりも1月が弱め、2月が強めに出ている可能性があるため、基調を判断するためには1、2月を均してみる必要がある。

23年1、2月の平均を22年10-12月期と比較すると、米国向けが▲0.9%、EU向けが▲6.9%、アジア向けが▲5.2%、中国向けが▲11.7%、全体では▲3.8%低い。海外経済の減速を受けて、主要国・地域向け全ての輸出が低調で、特に中国向けの落ち込みが大きくなっている。
 
先行きの輸出は、ゼロコロナ政策終了後の景気回復が期待される中国向けが持ち直すものの、金融引き締めの影響で景気減速がより鮮明となることが見込まれる欧米向けを中心に低迷が続く可能性が高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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