消費者物価(全国23年1月)-コアCPI上昇率は4.2%となったが、2月には3%程度まで低下する見込み

2023年02月24日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.コアCPIは41年4ヵ月ぶりの高い伸び

総務省が2月24日に公表した消費者物価指数によると、23年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比4.2%(12月:同4.0%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:4.3%、当社予想も4.3%)を下回る結果であった。

エネルギー価格の伸びは若干鈍化したが、全国旅行支援の割引率が縮小されたことから、宿泊料が12月の前年比▲18.8%から同▲3.0%へと下落率が縮小したことがコアCPIを押し上げた。

コアCPI上昇率は1981年9月以来、41年4ヵ月ぶりの高さとなった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比3.2%(12月:同3.0%)、総合は前年比4.3%(12月:同4.0%)であった。
コアCPIの内訳をみると、ガス代(12月:前年比23.3%→1月:同24.3%)は前月から伸びを高めたが、電気代(12月:前年比21.3%→1月:同20.2%)ガソリン(12月:前年比1.6%→1月:同0.4%)、灯油(12月:前年比4.7%→1月:同4.3%)の伸びが鈍化したことから、エネルギー価格の上昇率は12月の前年比15.2%から同14.6%へと縮小した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比7.4%(12月:同7.4%)となり、上昇率は前月と変らなかった。食料は21年12月以来、1年1ヵ月ぶりに上昇率の拡大に歯止めがかかる形となった。

ただし、食用油(前年比31.7%)、マヨネーズ(同22.3%)、麺類(同11.8%)など、引き続き前年比二桁の高い伸びとなっている品目は多い。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.22%(12月:1.25%)、食料(生鮮食品を除く)が1.76%(12月:1.72%)、携帯電話通信料が0.03%(12月:同0.02%)、全国旅行支援が▲0.13%(12月:同▲0.29%)、その他が1.32%(12月:1.30%)であった。

2.物価上昇品目の割合は約8割の高水準が続く

消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、1月の上昇品目数は414品目(12月は417品目)、下落品目数は64品目(12月は58品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は79.3%(12月は79.9%)、下落品目数の割合は12.3%(12月は11.1%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は67.0%(12月は68.8%)であった。

価格転嫁の主因となっていた円安は一服しているが、川下にあたる消費者物価指数にその影響が反映されるまでには時間がかかる。このため、上昇品目割合の高止まりはしばらく続くだろう。

3.コアCPI上昇率は2月に3%程度まで低下するが、その後も高止まりが続く

23年1月のコアCPIは前年比4.2%と41年4ヵ月ぶりの高い伸びとなったが、2月には電気・都市ガス代の負担緩和策が実施されることから、一気に3%程度まで伸びが低下する可能性が高い。

しかし、電力各社は4月以降の値上げを申請しており、これが認可されれば電気料金は再び大きく上昇する。電気料金の値上げに伴うエネルギー価格の再上昇が物価の押し上げ要因となりそうだ。電気代やガス代、ガソリン、灯油も含めたエネルギー価格は23年2月にはいったん前年比でマイナスとなるが、6月に上昇に転じた後、負担緩和策が縮減される10月以降はプラス幅が拡大することが見込まれる。
原油高や円安の一服により、物価高の主因となっていた輸入物価の上昇には歯止めがかかっている。このため、今後は原材料コストを価格転嫁する動きが弱まることが予想される。一方、下落が続いていたサービス価格は22年8月に上昇に転じた後、23年1月には前年比1.2%まで伸びを高めており、23年度入り後は、賃上げ率の高まりを受けて上昇ペースが徐々に高まるだろう。コアCPI上昇率は23年末でも2%程度で高止まりすることが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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