勢いづく金(gold)相場、金価格は史上最高値を突破するか?

2023年02月03日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 金相場が勢いづいている。国際的な指標であるNY金先物は昨年秋以降、米物価上昇率の低下を背景に急上昇し、過去最高値(2069.40ドル)が視野に入っている。また、国内金先物もNY金の上昇を受けて過去最高値(8129円)に近い水準で高止まりしている。
     
  2. NY金先物は今後も上昇基調を継続すると見ている。FRBは春に利上げを停止し、来年年初からは利下げに転じると見込まれるため、米金利が名実ともに低下に転じ、ドル安進行も相まってNY金を押し上げるだろう。その他要因では、米インフレの鈍化がインフレヘッジ需要の減少を通じて上値を抑えるものの、世界経済の下振れリスクや地政学リスクなどへの警戒から安全資産需要は根強く残り、NY金上昇のサポート要因になる。時間軸としては、年前半はこれまでの急上昇の反動や、市場が米利下げを前のめりに織り込んでいることの修正が入りやすいため、上値の重い展開が予想される。しかし、年後半には米利下げが現実味を増してくることで改めて米金利が低下し、NY金の押し上げ圧力が高まる。過去最高値を突破し、2100ドルに接近する可能性が高いと見ている。
     
  3. 一方、国内金先物は、NY金と比べて上値の重い展開が予想される。今後とも円高の進行が国内金の上値を抑えると見込まれるためだ。今後想定される米利下げの織り込みはNY金の上昇を通じて国内金の押し上げ圧力となるものの、同時に円高を促すため上昇圧力が抑制される。さらに、今後も日銀の緩和修正観測が円高要因になると見込まれるが、日銀の緩和修正観測がNY金に与える影響は限定的であるため、日銀発の円高圧力は素直に国内金の押し下げ圧力になると考えられる。国内金先物は既に過去最高値に肉薄しているうえ、NY金の上昇基調は続くと見られるため、年内に過去最高値の更新もあり得る。ただし、円高の進行が重荷となるため、大幅な上昇は見込みづらい。

 
■目次

1. トピック:金価格は史上最高値を突破するか?
  1)NY金先物の動向と見通し
  2)国内金先物の動向と見通し
2. 日銀金融政策(1月)
  ・(日銀)現状維持(+資金供給オペの拡充を決定)
  ・4つのグループがアミカスブリーフを提出・受けとめと今後の予想
3. 金融市場(1月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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