ユーロ圏失業率(2022年11月)-低失業率のなか雇用環境は一進一退

2023年01月10日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:失業率は6.5%で横ばい

1月9日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏失業率(2022年11月、季節調整値)】
失業率は6.5%、市場予想1(6.5%)と同じで、前月(6.5%)から横ばいだった(図表1)
失業者は1084.9万人となり、前月(1085.1万人)から0.2万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:低失業率のなか、雇用は一進一退の状況

ユーロ圏の22年11月の失業率は6.5%で、前月(6.5%)から横ばいで、統計データ公表以来の最低値が続いている。なお、10月以前のデータは改定値でほとんど修正されなかった。

失業者数は11月の前月差で0.2万人減となり、減少幅は10月(同15.2万人減)から縮小した(図表3・4)。主要国の失業者数は前月差でいずれも減少しており、減少幅が大きい順にフランス(▲2.4万人)、スペイン(▲2.3万人)、イタリア(▲1.6万人)、ドイツ(▲0.7万人)となった。

11月の若年失業率は15.1%となり、10月(15.0%)からやや増加した(図表2)。また、10月以前のデータも改定値でほとんど修正されなかった。若年失業率は22年5月(14.1%)をボトムに悪化傾向にある。

若年失業者数は11月で235.3万人(前月差+3.6万人)となり、10月(▲2.9万人)のマイナスからプラスに転じた(図表4)。失業者数は、総数で見るとコロナショック直前(20年3月)を大幅に下回っているが、若年失業者はコロナショック直前をやや上回る水準となっている。
国別の11月のデータを見ると、失業率はデータが公表されている19か国中、悪化した国が8か国、改善が7か国、横ばいが4か国だった(図表5)。また、若年失業率は公表されている16か国中、悪化した国が7か国、改善が5か国、横ばいが4か国だった(図表6)。
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリアでは失業者が減少したものの、非労働力人口がそれ以上に増加し、就業者は減少した。その結果、労働参加率は65.5%に低下した(図表7)。一方、ポルトガルでは失業者も非労働力人口も増加し、就業者数は低下した(図表8)。総じて見ると、失業率が歴史的低水準にあるなか、雇用環境は一進一退という状況にあると見られる。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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