貿易統計22年10月-海外経済減速の影響で輸出が弱めの動き

2022年11月17日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.年率20兆円台の貿易赤字(季節調整値)が続く

財務省が11月17日に公表した貿易統計によると、22年10月の貿易収支は▲21,623億円の赤字となり、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲16,100億円、当社予想は▲16,880億円)を大きく上回る結果となった。輸出が前年比25.3%と9月の同28.9%から伸びが鈍化する一方、原油高、円安の影響で輸入が前年比53.5%(9月:同46.0%)と伸びが大きく高まったため、貿易収支は前年に比べ▲20,872億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲0.3%(9月:同3.8%)、輸出価格が前年比25.8%(9月:同24.2%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比5.6%(9月:同▲1.7%)、輸入価格が前年比45.3%(9月:同48.2%)であった。
季節調整済の貿易収支は▲22,992億円と17ヵ月連続の赤字となり、9月の▲20,368億円から赤字幅が拡大した。輸出は前月比2.2%の増加となったが、輸入が同4.2%とそれを上回る伸びとなったことが赤字の拡大につながった。貿易収支(季節調整値)は22年5月以降、6ヵ月連続で年率▲20兆円台の大幅赤字となっている。
10月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=106.1ドル(当研究所による試算値)と、9月の111.0ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は、90ドル程度で推移しているが、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は100ドル台で高止まりすることが見込まれる。

輸入価格の高止まりが続くこと、海外経済の減速を背景に輸出が数量ベースで低迷することから、貿易収支は当面大幅な赤字が続くことが予想される。

2.輸出は低迷が続く見込み

22年10月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比4.7%(9月:同18.3%)、EU向けが前年比9.4%(9月:同11.2%)、アジア向けが前年比▲6.2%(9月:同▲2.5%)、うち中国向けが前年比▲16.0%(9月:同▲7.8%)となった。
22年10月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲3.2%(9月:同▲6.0%)、EU向けが前月比▲0.1%(9月:同7.7%)、アジア向けが前月比▲3.8%(9月:同1.1%)、中国向けが前月比▲12.1%(9月:同1.4%)、全体では前月比▲0.7%(9月:同▲0.0%)となった。

EU向けは堅調を維持しているが、ロックダウンの解除を受けて持ち直していた中国向けは再び落ち込み、景気が減速している米国向けは低迷が続いている。輸出数量全体としては弱めの動きとなっている。

なお、自動車輸出(台数ベース)は前年比27.6%の高い伸びとなったが、前年同月に大きく落ち込んだ(前年比▲35.7%)反動によるもので、季節調整値(当研究所による試算値)では前月比▲3.2%(9月:同▲0.7%)と2ヵ月連続で減少した。22年夏場にかけて持ち直していた自動車輸出は再び弱い動きとなっている。

先行きの輸出は、金融引き締めの影響で景気減速がより鮮明となることが見込まれる欧米向けを中心に低迷が続く可能性が高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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