3つ目は「市場変化・社会変化」である。2.ペルソナで述べた通り、Z世代で流行っていると謳われているもののなかにも、手放しで信用できないことも多い。というのも、流行自体が昔の様に原宿発、渋谷発の様に特定の地域で若者文化が生まれる側面よりも、YouTubeやTIKTOKなどのインフルエンサーから発信されているモノやSNSによって趣味のコミュニティに属し、情報共有を行うことが一般的になったことで(世間的に見れば規模は小さいが)特定のファンコミュニティで爆発的にヒットしている商品なども多数存在しているからだ。従って、同じZ世代でも普段消費しているコンテンツによって流行していると感じるモノ・コトは千差万別なのである。
Z世代の消費に関する調査においても調査する地域や、調査対象者の学校内での人気度、ファッションやメイク情報に対する興味への度合いなどによって結果は異なるだろうし、ある意味原宿や渋谷など特定の場所が"流行が生まれる場所"という記号を擁し、その記号を求めて若者が訪れていた時代
3の方が若者の流行を捉えやすかったと言えるだろう。そのため、筆者は特定の商品や消費行動の一側面のみを捉えてZ世代の普遍的な流行や特徴として整理する事には妥当性があるとは思えないのである
4。
一方で、全ての消費者や生活者に影響を与えるような市場変化や社会変化をいつ経験したのか、他の世代と比較することによって、他の世代との違いを浮き彫りにし、その違いからZ世代の消費行動や価値観について語ることはできると思う。
市場変化に関してはスマートフォンを取り上げるのがわかりやすいだろう。2010年以降スマートフォンの保有率は若者を中心にガラケーを上回り、2013年の総務省「通信利用動向調査」によれば"13歳~19歳"のスマホ保有率は64.3%と、6割を超えた。2013年以降に携帯電話を初めて保有する若者の多くが、ガラケーではなくスマホを購入しているわけである。流行商品の購買経験の有無は前述した通り、どの層で流行っているか、誰向けの商品なのかといった点に影響を受けるが「ガラケーではなくスマホが選ばれることが普通になってきた」という市場動向は少なからず2013年以降に携帯電話の購入を検討したすべての若者に影響を与えた普遍的な事実であり、その事実の下で生まれる価値観や特徴(スマホネイティブ・SNSを参考に商品を購入するなど)を他の世代と比較することで彼らの消費文化の理解に繋げることができる。
そこで、Z世代が生まれた年代別のイベントについて見てみよう。図1,2は2001年生まれのZ世代の年表である。彼らが生まれた2001年は東京ディズニーシーが開業しており、ディズニーリゾート旅行をするにあたっても、生まれた時からディズニーランドに行くか、ディズニーシーに行くかという選択肢が存在していたわけだ。また、幼少期の2008年には「iPhone」が誕生し、小学生で既にスマートフォンを持つ子どもたちも散見した。10歳の頃には人気ユーチューバーの「ヒカキン」が活動を開始している。サムライト株式会社による動画専用プラットホームの利用率調査をみるとZ世代のYouTube利用率は82.8%であり、今やYouTubeは若者に欠かせないプラットホームになっている
5。この頃になると、現在では当たり前となったYouTuberという職業の萌芽を垣間見ることができ、個人が動画(コンテンツ)配信によって収益を得るというビジネスモデルに対する抵抗感や、ネット上に自身の肖像が残るという事に対する考え方も、それ以前の世代とは違う価値観が育まれていると言えるだろう。