宿泊旅行統計調査2022年6月~延べ宿泊者数は4か月連続で回復。日本人延べ宿泊者数はコロナ前に近い水準まで回復

2022年08月01日

(安田 拓斗) 日本経済

1.6月は延べ宿泊者数、客室稼働率ともに回復

観光庁が7月29日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2022年6月の延べ宿泊者数は3,451万人泊となった。新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、▲24.7%(5月:同▲28.5%)と4か月連続でマイナス幅が縮小した。

2022年6月の日本人延べ宿泊者数は3,385万人泊となり、2019年比同月比は▲6.5%(5月:同▲13.5%)と4か月連続でマイナス幅が縮小した。外国人延べ宿泊者数は66万人泊となり、2019年同月比は▲93.1%(5月:同▲93.1%)と低迷を続けている。

日本人延べ宿泊者数の2019年同月比は、2022年入り後、オミクロン株の感染拡大により大きく落ち込んだが、3月21日にまん延防止等重点措置が全面解除されたことを受けて、足元では4か月連続でマイナス幅が縮小している。

外国人延べ宿泊者数の2019年同月比は、2020年4月以降、▲90%台で推移を続けている。
2022年6月の客室稼働率は全体で44.2%となった。2019年同月差では▲16.4%(5月:同▲18.8%)と4か月連続でマイナス幅が縮小した。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は32.2%、2019年同月差:▲4.5%(5月:同▲7.9%)、リゾートホテルは41.3%、2019年同月差:▲14.1%(5月:同▲18.9%)、ビジネスホテルは54.8%、2019年同月差:▲19.5%(5月:同▲21.7%)、シティホテルは50.6%、2019年同月差:▲29.3%(5月:同▲31.9%)、簡易宿所は17.9%、2019年同月差:▲11.3%(5月:同▲13.5%)であった。2019年同月比では全ての宿泊タイプでマイナス幅が縮小し、客室稼働率は回復している。

2.第7波の宿泊旅行への影響は限定的となる

2022年入り後、オミクロン株の感染拡大を受けて、日本人延べ宿泊者数と客室稼働率は大幅に低下したが、3月21日にまん延防止等重点措置が全面解除され、足元では回復に向かっている。
延べ宿泊者数の回復を阻害する最も大きな原因は、新型コロナウイルス再拡大に伴う新たな行動制限である。現在、新規感染者数が爆発的に増加し、第7波が日本を襲っている。しかし新型コロナウイルス感染症対策本部は、新たな行動制限を行うのではなく、社会経済活動をできる限り維持しながら、感染対策に取り組む姿勢を示している。そのため第7波が「宿泊旅行」に与えるダメージは第6波の時ほど大きくはならないだろう。

観光庁は足元の感染拡大を受けて、7月半ばからの実施を検討していた「全国旅行支援」の延期を発表した。一方で、GoToトラベルの代替として2021年4月1日から実施しており、2022年7月14日宿泊分(7月15日チェックアウト分)までとしていた県民割(地域観光事業支援)の期間を2022年8月31日宿泊分(9月1日チェックアウト分)まで延期することを発表した。「全国旅行支援」では8月の最繁忙日を除外する予定だったが、今回延長された県民割では、除外日は設定されていない。県民割によって夏休みを利用した同一地域ブロック内旅行の需要が喚起されることが期待される。また、観光庁は感染状況が改善すれば、速やかに「全国旅行支援」を実施すると述べており、実施されればさらなる旅行需要の喚起に繋がるだろう。

政府が行動制限を実施せずに、新型コロナウイルスと併存して平時への移行を目指す姿勢を保てば、県民割の活用、国際的な人の往来再開の達成が近づき、延べ宿泊者数、客室稼働率は回復していくだろう。
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗(やすだ たくと)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済

経歴

【職歴】
 2021年4月  日本生命保険相互会社入社
 2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

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