ユーロ圏失業率(2022年5月)-低下が進み6.6%に

2022年07月01日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:6.6%まで低下

6月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2022年5月、季節調整値)】
失業率は6.6%、市場予想1(6.8%)より低く、前月(6.7%)からも低下した(図表1)
失業者は1100.4万人となり、前月(1108.5万人)から8.1万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:若年失業率の改善が顕著

ユーロ圏の22年5月の失業率は6.6%で、前月の6.7%から低下し、統計データ開始以来の最低値となった(図表3)。4月以前の改定値については、改定幅は大きくなかったが、4月の失業率が改定値でわずかに下がっている(改定前:6.8%→改定後:6.7%)。

失業者数は5月の前月差で8.1万人減(4月改定値:▲10.4万人)となり、昨年4月以降の減少数(21年5-22年4月累計)は235.4万人となった(図表4)。13か月連続で失業者数は減少し、コロナ禍で増加した人数を取り戻してからも6か月連続で減少している。

5月の若年失業率は13.1%で4月(改定前:13.9%→改定後:13.8%)から大幅に低下した(図表2)。4月以前の改定値は4月が若干下がったが、3月以前の改定値はほとんど変化がなかった。若年失業者数は5月で198.8万人(前月差▲8.9万人)となり、200万人を下回った。
国別の5月のデータを見ると、失業率ではデータが公表されている18か国中、悪化した国が4か国、改善が9か国、横ばいが5か国だった(図表5)。また、若年失業率ではデータが公表されている15か国中、悪化した国が1か国、改善した国が14か国だった(図表6)。5月は若年失業率が大幅に低下しているが、広範な国での改善だったことが分かる。
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリアは失業者が減少したものの、非労働力人口が増加したことで、就業者数が減少した(図表7)。ポルトガルでは失業者も非労働力人口も増加し、就業者数が減少している(図表8)。イタリアは失業率が低下したが、内容は良くない。また、ポルトガルでは非労働力人口の増加幅が大きく、21年1月以来の増加数となった。そのため、ポルトガルでは労働参加率が67.4%まで低下したが、水準は依然としてコロナ禍前水準を大幅に上回っている。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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