ユーロ圏失業率(2022年4月)-6%台後半で横ばいでの推移が続く

2022年06月02日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:3か月連続の6.8%

6月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2022年4月、季節調整値)】
失業率は6.8%、市場予想1(6.8%)と同じで、前月(6.8%)から横ばいだった(図表1)
失業者は1118.1万人となり、前月(1127.7万人)から9.6万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:雇用環境は良好だが、さらなる改善は見られず

ユーロ圏の22年4月の失業率は6.8%で、前月の6.8%から横ばいだった。3月以前の数値の改定幅は大きくなかったが、3月の失業率が改定値でわずかに下がった(改定前:6.9%→改定後:6.8%)ため、3か月連続での6.8%だった。

失業者数は4月の前月差で9.6万人減(3月改定値:▲3.4万人)となり、昨年4月以降の減少数(21年5-22年4月累計)は217.5万人となった(図表3・4)。12か月連続で失業者数は減少しており、コロナ禍で増加した人数を取り戻してからも5か月連続で減少している。

4月の若年失業率は、13.9%となり3月(改定前:13.9%→改定後:14.0%)からわずかに改善した(図表2)。なお、2月以前の若年失業率の改定値は前月公表値からほとんど変化がなかった。若年失業者数は4月で212.2万人(前月差▲0.1万人)であり、若年失業者数で見るとここ数か月は横ばい圏での推移となっている。
国別の4月のデータを見ると、失業率では19か国中、悪化した国が5か国、改善が10か国、横ばいが4か国だった(図表5)。若年失業率ではデータが公表されている16か国中、悪化した国が4か国、改善した国が11か国、横ばいが1か国だった(図表6)。若年失業率ではギリシャなど一部に大幅な変動が見られたものの、全体の失業率は悪化・改善した国のいずれも小幅な変動だった。
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリアは失業者が減少したものの、非労働力人口が増加したことで、就業者数が減少した(図表7)。ポルトガルでは失業者も非労働力人口も増加、就業者数は減少している(図表8)。いずれの国でも変化幅は小幅だったが、労働参加率がイタリアではコロナ禍前程度まで回復、ポルトガルではコロナ禍前水準を大幅に上回るなかで、雇用環境のさらなる改善は見られなかったと言える。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)