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国民皆保険実現の2年後に換算レートは全国一律となった
戦後、地域区分は甲地を6大都市とその周辺、乙地をそれ以外の市町村、というふうに2つに再編された。そして、1958年に、「新医療費体系」に移行した。そこでは、甲表と乙表の2つの診療報酬点数表が導入された。同年、国民健康保険法が全部改正され、市町村の国保事業運営が義務付けられた。こうした動きを経て、1961年に、国民皆保険が実現した。
新医療費体系において、甲表は、医師などの技術を重視する観点から、手術等の点数を高くする一方、投薬等の点数を低くした。たとえば、初診時、入院時の投薬料・検査料は、初診料、入院基本料に含めるといった特徴を持っていた。一方、乙表は技術料を定額とし、モノと技術の点数を分離した以外は、基本的に従来の点数表を存置していた。
各医療機関は、どちらかの点数表を選択することとされた。国公立病院、日赤、済生会などの公的医療機関は甲表、中小病院や診療所の多くは乙表を選択した
7。甲表と乙表は、簡素化を図る観点から、1994年に一本化された。
新医療費体系導入時には、甲表適用の場合、甲地と乙地の差は5%。乙表適用の場合、甲地と乙地の差は8%と、地域区分による差が残されていた
8。また、新医療費体系への移行(1958年)にともなって、換算レートは、1点=10円とされた。このとき以来、現在まで、この1点=10円がそのまま用いられている。
その後、1963年、地域間のレートを統一しないと大都市における医師の偏在が加速してしまうとの理由から、乙地のレートを甲地と同じ水準にまで引き上げた。これにより、換算レートは全国一律となった。
なお、2008年改正の高齢者の医療の確保に関する法律では、都道府県ごとの診療報酬の設定を可能とする特例の規定が設けられた。ただし、これまでに、この特例が適用された事例はない。
7 病院では65%、診療所では93%の施設が乙表を使用したという。(「ホスピタルフィーのあり方について」(社団法人全日本病院協会, 全日病総研, 2010年3月)より)
8 「医療提供制度を改革する政策手法-診療報酬, 計画規制, 補助金」島崎謙治(社会保障研究2016, vol.1, no.3, pp.596-611.)より。
3――他の公定価格制度には地域差を設けているものもある