中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
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2―ECの提案
3―EIOPAによるコメント
2021年10月1日
欧州委員会からのソルベンシーII提案に関するEIOPAのコメント
欧州保険年金監督局(EIOPA)は、ソルベンシーIIのレビューに関する欧州委員会の提案を歓迎する。提案は主にEIOPAのアプローチを共有し、2020年12月からのEIOPAの意見で設定された目的に従っている。EIOPAは、保険再建・破綻処理指令を策定し、ソルベンシーIIにマクロプルーデンスの視点を含め、比例原則を強化し、そして持続可能な金融に関するさらなる行動の義務を与える、という欧州委員会の提案を特に歓迎する。さらに、リスクフリー曲線の新しい補外法、金利リスク率の調整及びシステミックリスクに対処するための追加のツールと措置は歓迎すべきステップである。
効果的な国境を越える監督は消費者保護の前提条件であるため、国境を越える監督におけるEIOPAの役割を強化するという欧州委員会の意図は特に重要である。市場で特定された問題が解決されていない場合に、EIOPAがどの程度行動する手段を持っているかを考慮する必要がある。これらの問題を特定するEIOPAの能力は、ソルベンシーIIフレームワークの真のメリットであるが、行動するためのツールと権限がなければ、金融の安定を守り、保険契約者を保護するという使命を考えると、EIOPAは不快な立場に置かれることになる。
消費者保護の観点から、EIOPAは、EUレベルでの保険保証制度の最小限の調和が考慮されていないことを深く遺憾に思う。ソルベンシーIIと新たに提案された保険再建・破綻処理指令のレビューは、保険保証制度の分野における既存の断片化に対処するための優れた機会を構成した。現在の断片化の結果として、保険契約者は、保険契約が由来している国に応じて、EU内で業務展開している保険会社が破綻した場合に異なるレベルの保護を受ける。したがって、EIOPAは、欧州単一市場の機能と信頼を著しく損なう可能性があるため、この問題に取り組む必要があると引き続き考えている。
保険契約者に損害を与えるシナリオを回避するために、ソルベンシーIIの重要な要素はその保守性にある。EIOPAの助言は、流動性の低い負債のより有利であるが保守的な取扱いと、全体的なバランスの取れた更新を推奨した。EIOPAの見解では、一方ではボラティリティ調整計算を目的とした非流動性の考慮事項の除去、他方ではリスクマージンと金利リスク資本チャージの較正における緩和は潜 在的なリスクをもたらす。
最後に、EIOPAは、低リスクの保険会社が特定の要件から解放されるという検討に満足しているが、ソルベンシーIIの比例原則が監督上のレビュープロセスに組み込まれていることが重要である。このアプローチにより、監督者は、監督者によるレビュープロセス中にも比例性の保険会社による申請を可能にする柔軟性を得ることができる。これは、比例を「一連のルール」に変換するのではなく、原則として維持することになる。
レビュープロセスが始まったばかりであることを考慮に入れると、EIOPAは、レビュープロセスにおいて欧州委員会、欧州議会及び理事会をさらにサポートする準備ができている。
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