(日銀)現状維持
日銀は9月21日~22日に開催した金融政策決定会合において、金融政策の現状維持を決定した。長短金利操作、資産買入れ方針ともに前回から変更なしであった。
声明文における景気の総括判断は、「(内外における新型コロナウイルス感染症の影響から)引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」に維持された。個別項目では、輸出・生産について、「一部に供給制約の影響を受けつつも、増加を続けている」(前回は「着実な増加を続けている」)とトーンダウンされた一方、住宅投資は上方修正された。先行きにかけての経済回復・物価上昇シナリオは不変であった。
なお、今回は、前回会合において骨子素案が公表された「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション(気候変動対応オペ)」について、その詳細が決定され、公表された。初回のオペは12 月下旬にオファーされ、それ以降は原則として年2回のオペが実施される予定。
会合後の会見で、黒田総裁は、まず、足元の景気について、「個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力が依然として強く、引き続き足踏み状態」だが、「企業部門では、輸出や生産の増加を受けて収益が改善し、それが設備投資の持ち直しにつながるという、いわゆる前向きの循環メカニズムが働いて」おり、「景気の持ち直し基調は維持されている」との認識を示した。また、先行きについても、「ワクチンの接種率は既に欧米並みに高まってきており、感染抑制と消費活動の両立がより容易になっていけば、個人消費は、ペントアップ需要にも支えられて、再び持ち直していく可能性が高い」との見方を示した。世界的に生産の抑制要因となっている半導体不足については生産復旧の動きに触れ、「このまま何カ月も続いていくということではないだろう」と述べた。
今回は自民党総裁選の直前のタイミングということで、同総裁選に絡む質問が相次ぎ、新政権発足による金融政策への影響に対する関心の高さがうかがわれた。
同総裁選候補者(名指しはしていないが高市氏のこと)から「日銀は雇用をもっとしっかりみてほしい」との意見が出ていることについて問われた場面では、黒田総裁は「候補者の見解について何か私からコメントすることはあまり適当ではないので、差し控えたい」と前置きしたうえで、「(日銀の)一義的な目標は物価の安定だけれども、雇用を含めて国民経済が健全に発展するような状況を目指すということは、ある意味で日本銀行法も述べている通り」と、既に暗黙的な目標として組み込まれていることを指摘した。
また、政府財政と日銀の大規模国債買入れについて問われた際には、「日本銀行の金融政策は、あくまでも日本銀行法に定められている物価の安定と金融システムの安定を目指して行っており、政府の借金を助けるという目的で行っているわけではない」ものの、「財政政策と金融政策の協調というかポリシーミックスが行われていることは事実」と、従来通りの説明を繰り返した。
政府の方から「共同声明」の修正について議論の打診があった場合の対応を問われた場面では、直接的な回答を避けた。
なお、気候変動対応オペの利用見込みについては、「気候変動対応は、ある意味まだ始まったばかりなので、いきなり巨額のものが出てくるとは思いない」ものの、「今後 10 年間続けることになっているため、最終的にはかなりの規模になる」との見通しを示した。