雇用関連統計21年8月-緊急事態宣言長期化の影響で休業者が再び増加

2021年10月01日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.失業率は前月から横ばいの2.8%

総務省が10月1日に公表した労働力調査によると、21年8月の完全失業率は前月から横ばいの2.8%(QUICK集計・事前予想:2.9%、当社予想も2.9%)となった。労働力人口が前月から▲33万人の減少となる中、就業者が前月か▲32万人の減少となり、失業者は前月から1万人増の191万人(いずれも季節調整値)となった。

失業率は前月と変わらなかったが、就業者が減少する中で非労働力化進展が失業率の抑制要因となっており、内容は悪い。
就業者数は前年差17万人増(7月:同56万人増)と5ヵ月連続で増加したが、増加幅は大きく縮小し、コロナ禍前の前々年と比較すると▲58万人の減少となった(7月は同▲20万人減)。

産業別には、製造業が前年差15万人増(7月:同▲5万人減)と10ヵ月ぶりに増加したが、卸売・小売が前年差17万人増(7月:同63万人増)と増加幅が縮小したほか、緊急事態宣言長期化の影響で、宿泊・飲食サービスが前年差▲25万人減(7月:同1万人増)と3ヵ月ぶりに減少した。
 
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ37万人増(7月:同35万人増)と5ヵ月連続で増加したが、前々年差では▲46万人減(7月:同▲43万人減)と減少が続いている。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数は前年差47万人増(7月:16万人増)と増加幅が拡大したが、非正規の職員・従業員数が前年差▲10万人減(7月:同19万人増)と5ヵ月ぶりに減少し、前々年差では▲130万人減(7月:同▲112万人減)と減少幅が拡大した。

2.飲食店の休業率が急上昇

休業者数は248万人となり、前年に比べて32万人の増加(7月:同▲8万人減)となった。休業者が前年に比べて増加したのは、21年2月以来6ヵ月ぶりとなる。

産業別には、緊急事態宣言長期化の影響を受けて、飲食店の休業率が7月の6.3%から13.1%へと急上昇した(休業率は原数値)。

3.有効求人倍率、新規求人倍率とも低下

厚生労働省が10月1日に公表した一般職業紹介状況によると、21年8月の有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント低下の1.14倍(QUICK集計・事前予想:1.14倍、当社予想は1.15倍)となった。有効求人数は前月比1.2%と2ヵ月連続で増加したが、有効求職者数が同2.2%とそれを上回る伸びとなった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から▲0.01ポイント低下の1.97倍となった。新規求人数が前月比0.9%の増加となったが、新規求職申込件数が同1.8%とそれを上回る伸びとなった。

失業率は前月と変わらなかったが、就業者が前月から大きく減少し、休業者が増加に転じるなど、内容は厳しくなっている。緊急事態宣言は7月以降対象地域が拡大し、9月末まで継続した。緊急事態宣言が解除された10月以降、景気は持ち直しに向かうと見込まれるが、雇用情勢は景気に遅れて動く傾向があるため、しばらく厳しい状態が続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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