ユーロ圏失業率(2021年5月)-失業率は7.9%と改善傾向が持続

2021年07月02日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:失業率は7.9%に低下

7月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2021年4月、季節調整値)】
失業率は7.9%、市場予想1(8.0%)より低く、前月(8.1%)からも低下した(図表1)
失業者は1279.2万人となり、前月(1309.8万人)から30.6万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:雇用環境は引き続き安定

ユーロ圏の5月の失業率は7.9%と前月からやや低下した。4月までの改定値では、4月が8.0%から8.1%と悪化方向に修正される一方で、20年11月以前の失業率がやや改善方向に修正された。失業者数は30.6万人減となり、3月以降、3か月連続での減少となった(図表3)。

5月の若年失業率は17.5%と4月(18.4%)から大きく低下した(図表2)。なお、4月までの改定値を見ると、コロナ禍以降で悪化方向に改定されており、特に20年12月以降については前月までは17%台で推移していたが、改定値では18%を超える失業率に修正されている(例えば4月は改定前17.2%→改定後17.4%)。主要国ではドイツやフランスが悪化方向への修正幅が大きかった。

コロナ禍後の雇用状況を時系列で追うと、失業者数は昨年10-11月に減少したのち、感染拡大や行動制限の強化を受けて今年2月頃までは改善が足踏みしていた。ただし失業者は大きく悪化することなく、年明け2月以降には再び失業者の減少が目立つようになった(図表3・4)。
国別の5月のデータを見ると、19か国中3か国が悪化、15か国が改善、1か国が横ばいとなっており改善した国が多かった(図表5)。また、以下で触れるポルトガルのように失業率の悪化が必ずしも雇用環境の悪さを示していない可能性もある。若年失業率も公表されている16か国では改善もしくは横ばいとなっている(図表6)。
詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、5月はいずれの国でも就業者数の増加と非労働力人口の減少が見られた。失業者はイタリアで減少する一方、ポルトガルでは増加し。ポルトガルの失業率は悪化しているが、一部は職探しを諦めた人が労働市場に再び参加していることが要因と見られ、雇用環境は引き続き安定していると言える(図表7・8)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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