Apple Inc.(以下、Apple)は米国カリフォルニア州に本社を置く企業で、iPhoneをはじめとするデジタルデバイス(機器)の開発・販売と、アプリストアであるApp Storeを中核として、デジタルコンテンツを提供・仲介するデジタルプラットフォーム事業者である。
Appleが巨大デジタルプラットフォーム事業者として数えられるようになるまでのサクセスストーリー(一時的な混迷も含む)は比較的有名と思われるが、簡単にまとめてみる。
1976年4月、スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニックおよびロン・ウェインの3名によってAppleは創業された(ロン・ウェインは直後に脱退)。Appleはコンピューター用のプリント基板を作成することから事業を開始し、最初のヒット商品は1977年に発売されたパーソナルコンピューターであるAppleIIで、表計算ソフトVisiCalcによりヒットが加速した。1984年には、今では自然であるマウスを動かしたり、クリックしたりすることでPCを操作する方式(GUI(Graphical User Interface))を採用したマッキントッシュコンピューターを発売した。しかし、マッキントッシュが高額すぎたことや対応ソフトが不足していたことにより販売は不振であった。結果として、創業者であるスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニックは1985年に経営から離れることとなった。
その後、マッキントッシュは綺麗な印刷を可能にすることで、PCで出版物を作成できるDPT(DeskTop Publishing)用のコンピューターとして人気を博し、高価格路線でのPCとしての地位を確立した。
Appleは、現在のiPhoneやiPod touchの元祖ともいうべき、携帯型のデバイスであるPDA(personal digital assistant)の開発を行い、1992年にNewton Messagepadを公表した。ただし、これは商業的には成功しなかった。その後、1995年にMicrosoftがWindows95を発売する一方、Appleは有力な対抗策がないまま低迷期が続く。
この流れが変わったのが1997年のスティーブ・ジョブズの復帰である。1998年には透明なカバ―デザインで一世を風靡したデスクトップ型のPCであるiMacが発売された。2001年には携帯音楽デバイスであるiPodが発売された。これはカセットテープやMDにとって代わり、ハードに音楽をダウンロードして楽しむものである。このときに音楽を販売するサイトであるiTunes Music Store(iTunes Store)で一曲当たりかつ低額で販売する方策を採用した。このような音楽をCDやMDといったハードを買うことによってではなく、サイトからダウンロードして楽しむという発想は画期的であった。
2006年にノートパソコンであるMacBookの販売が開始された。なお、MacBookはMacBook AirとMacBook Proを後継機として2019年に販売を終了した。Appleは当社最初のスマートフォンとして2007年にiPhoneを発売開始した。同時期にスマートフォンから通話機能だけを取り除いたiPod touchを発売した(ポータルメディアプレーヤーという)。2008年7月にはiPhone3Gを発売するとともに、App Storeのサービスを開始した。App Storeは、iPhoneなどApple製品にアプリをダウンロードする唯一のサイトである。膨大な数に上るiPhoneユーザーにアプリを届けようとすると、このApp Storeに登録する必要があるが、販売にあたって30%の手数料を課すことが高額であるなどとの批判もある。この点に関しては訴訟も発生しているので、後述する。
また、2010年にタブレット型のコンピューターであるiPadが発売され、2015年にはウェアラブル端末(スマートウォッチ)であるApple Watchの発売が開始された。
2――Appleのビジネスモデル