先駆的医薬品等指定制度とはどういうものか、ここで簡単に概要をみておこう。
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世界に先駆けて日本で開発されることが指定の条件
制度では指定基準として、4つの要件が示されている。先駆的医薬品の指定を受けるためには、これらの4要件を満たすことが必要となる。
(1) 治療薬の画期性 : 原則として、以下のいずれかに該当するものであること
・既承認薬と異なる新作用機序であること
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・既承認薬と同じ作用機序であっても開発対象とする疾患への適応は初めてであること
・革新的な薬物送達システムを用いていること
(2) 対象疾患の重篤性 : 以下のいずれかに該当するものであること
・生命に重大な影響がある重篤な疾患
・根治療法がなく症状(社会生活が困難な状態)が継続している疾患
(3) 対象疾患に係る極めて高い有効性 :
既承認薬が存在しない、又は既承認薬・治療法に比べて有効性の大幅な改善が見込まれる、若しくは著しい安全性の向上が見込まれること。ただし、有効性の大幅な改善が見込まれるものについては、少なくとも国内外を問わず探索的臨床試験等において、ヒトに対する有効性が示唆されていること。
(4) 世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思・体制 :
日本における早期開発を重視し、世界(日本と同等の水準の承認制度を有している国)に先駆けて、又は同時に、日本で承認申請される予定のもの
3であり、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」
4)で実施されている先駆け総合評価相談を活用し承認申請できる体制及び迅速な承認審査に対応できる体制を有していること
5。
2 作用機序とは、医薬品が、薬理学上の治療効果を発揮するための特異的な生化学的相互作用を指す。通常、薬がどの標的分子(タンパク質)と相互作用して、どのような影響を与えた結果、治療効果が得られるのか、分子レベルで言及する。
3 世界で最も早いか、又は日本と他国で同時に承認申請することが要件の1つとされている。ただし、医薬品メーカーの申請書類の準備などを考慮して、最初の国の申請日を起算日とし、同日から30日以内の申請は同時申請とみなすこととされた。また、申請日と申請受理日が存在する国においては、申請受理日を起算日とする。なお、法制化前の制度では、日本と他国で同時申請する場合、基本的には、同日に申請することとされていた。
4 PMDAは、Pharmaceuticals and Medical Devices Agencyの略。医薬品などの健康被害救済、承認審査、安全対策の3つの役割を担っている。(同法人のホームページより)
5 なお、国内での開発が着実に進んでいることが確認できる、以下の両方に該当する治療薬であることが望ましいとされている。(a) ヒトでの最初の試験(First In Human (FIH) 試験)が日本で行われたもの。(b) 予想される薬物の効果が示されるかどうかを判定する試験(Proof Of Concept (POC) 試験)が日本で行われたもの。