ユーロ圏GDP(2021年1-3月期)-行動制限長期化でマイナス成長が続く

2021年05月06日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:2四半期連続での前期比マイナス

4月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国GDP(2021年1-3月期、季節調整値)】
前期比は▲0.6%、市場予想1(▲0.8%)より上振れ、前期(▲0.7%)から改善(マイナス幅が縮小)した(図表1)
前年同期比は▲1.8%、市場予想(▲2.0%)より上振れ、前期(▲4.9%)から改善(マイナス幅が縮小)した(図表2)

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:コロナ禍前の水準を5.5%ほど下回る

2021年1-3の成長率は前期比▲0.6%(年率換算▲2.5%)となり、20年10-12月期の前期比▲0.7%に続く2四半期連続でのマイナス成長となった。

ユーロ圏では新型コロナウイルスの感染拡大で、昨年11月頃から厳しいロックダウンを実施していた。変異株の流行もあって、感染拡大防止のための行動制限が21年1-3月期のほとんどの期間で課されていたために、20年10-12月期よりも活動水準が下がったと言える。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると(図表3)、前期比ではドイツ▲1.7%、フランス+0.4%、イタリア▲0.4%、スペイン▲0.5%だった。また、前年同期比ではドイツ▲3.0%、フランス1.5%、イタリア▲1.4%、スペイン▲4.3%となっている。前期比・前年同期比ともにフランスはプラスとなったが、前年同期比での比較対象である20年1-3月期はすでにコロナ禍で経済が落ち込んでいた期間であり、コロナ禍前(19年10-12月期)と比較すると大国4か国はすべてマイナス圏にいる(図表4)。ユーロ圏全体では、コロナ禍前の水準を5.5%ほど下回っている。
フランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で見ていきたい。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費+0.3%(前期▲5.7%)、政府消費+0.5%(前期▲0.1%)、投資+2.2%(前期+1.3%)、輸出▲1.5%(前期+6.1%)、輸入▲0.1%(前期+1.7%)となった。投資はやや強めだったが、他の項目は弱含んでいる。

フランスの産業別付加価値は製造業が▲0.1%(前期+2.2%)、建設業が+3.9%(前期▲2.4%)、市場型サービス産業+0.1%(前期▲2.2%)、非市場型サービス+1.2%(前期▲0.9%)だった(図表5)。コロナ禍前との比較では市場型サービスが6.4%ほど低く、なかでも住居・飲食業が低迷している(コロナ禍前と比較して45%ほど低い)。
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費▲1.0%(前期+0.0%)、政府消費+0.5%(前期+1.3%)、投資▲1.9%(前期+1.0%)、輸出▲0.1%(前期+4.6%)、輸入▲1.3%(前期+6.2%)とだった。スペインは投資を含めて弱含みが続いている(図表5)。

産業別には(図表6)、製造業が前期比▲2.8%(前期+2.2%)、サービス業が前期比0.2%(前期+0.3%)なっている。サービス業は前期比でプラスとなった、コロナ禍前との比較では9.9%ほど低い。また建設業も低迷が目立っており、コロナ禍前の水準と比べ16.4%ほど低い状況にある。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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