住宅を購入する人は中古住宅について知るべきである-国内住宅市場を簡単に説明する

2021年03月26日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

■要旨

住宅購入にあたっては、新築住宅か中古住宅か、いずれかを購入することになるが、新築か中古のどちらかしか調べない人もいるだろう。しかし、新築住宅、中古住宅のいずれを買ったとしても、居住開始後は中古住宅となるので、住宅を購入する人は、中古住宅についても知っておいたほうがよい。住宅市場全体を簡単に説明していきたい。
 
新築住宅購入者は、「新築か中古」か、あるいは「戸建てかマンションか」、を決めてから物件を探すことが多いようだ。また、新築住宅購入者は、新築を好み、新築住宅を中心に検討する一方で、中古住宅購入者は新築・中古にはこだわらないが、割安感から中古住宅を選択しているとみられる。
 
住宅の取引戸数は、新築住宅が大半を占める。国内の住宅市場は新築住宅が中心であり、新築住宅を検討する人は中古住宅を検討する人の2倍以上いる。新築住宅は需要も供給も多い。住宅の情報を集める際には、新築住宅の価格や場所、広さ、設備等に目が行きやすい。しかし、新築住宅の価格と中古住宅の価格は、算出方法が大きく異なる点には注意が必要である。
 
新築住宅の場合、価格は、「必要となった費用に、売り主の利益を上乗せした金額を、住宅の戸数に配分して」設定される。また、中古住宅の場合、競争力により価格の設定方法が異なり、競争力の弱い普通の中古住宅の価格は、「建物の劣化の程度を反映した土地建物の価額」を、競争力の強い中古住宅の価格は、「複数の購入希望者から提示される最も高い購入希望額」を予想して設定されるが、ほとんどのケースで、後者が前者を上回ると思われる。
 
将来の売却を考えた場合、ローン残高以上で売り出し価格を設定する場合が多くなるが、売り出し価格が土地建物の価値を上回る場合、割高になり、お得感が薄れるので売却には時間を要するだろう。中古住宅であっても、競争力の強い中古住宅であれば、土地建物の価値がローン残高を上回る可能性が高い。
 
また住宅購入には多くの費用がかかるが、設備や建物グレードが賃貸物件より良い場合が多い。これから住宅の購入を考える人は、エリアを選定した上で、新築だけにこだわらず、幅広く物件を見ることをお勧めしたい。そして、その住宅の場所、広さ、デザイン、設備などの快適性と価格バランスなどの観点から、満足できると感じるのであれば、購入を検討しても良いのではないだろうか。

■目次

1. はじめに
2. 新築住宅と中古住宅を買う人の割合は
3. 新築住宅と中古住宅の価格設定の違い
4. 終わりに

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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