コラム

新型コロナウイルスの新規感染者数と支持率の関係-韓国のデータによる相関分析の結果-

2021年03月18日

(金 明中) 社会保障全般・財源

昨年12月のクリスマス前後に1日1000人を超えていた韓国における新型コロナウイルスの新規感染者数は、その後減少したものの、最近でも1日平均400人前後の新規感染者が発生している。また、その影響もあってか、政権初期に84.1%まで上昇していた文在寅大統領の支持率はその後低下の傾向が鮮明になり、2021年3月2週目の支持率は37.7%まで下落した。
政権や大統領の支持率は、国内の経済状況や政治的スキャンダル等国内外の多様な要因の影響を受けることが多い。では、韓国における新型コロナウイルスの感染拡大は文在寅政権の支持率とどのような関係があっただろうか。
 
この関係を分析するために、韓国で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された2020年1月19日から今年の3月2週までの新規感染者数と韓国の世論調査専門企業「リアルメータ」が毎週月曜日に発表している大統領の支持率を用いた。
 
データに基づいて1週間(月曜日~日曜日)の新規感染者数と翌週の月曜日の支持率の関係をみたところ、両者の間には負の相関があり(相関係数は-0.66)、統計的に有意であることが明らかになった。特に、1週間の新規感染者数が7,207人となった昨年12月末の翌週となる今年1月1週目の文大統領の支持率は35.5%となり、文政権が誕生してから最も低い数値を記録した。
もちろん、最近、文大統領の支持率が低下しているのは新型コロナウイルスの新規感染者数のみならず、不動産政策の失敗による首都圏を中心とした不動産価格の上昇、新型コロナウイルスの影響による経済のマイナス成長、北朝鮮との関係悪化、検察改革を巡る検察との対立等様々な要因が関係していると考えられる。しかしながら変異ウイルスが増加する等新型コロナウイルス感染症が、未だ収束していない現状を考えると、新型コロナウイルスに対する対策をおろそかにすることはできないだろう。
 
大統領の任期が1年と2カ月しか残っていない時点で支持率が30%後半であることは、歴代政権と比べると決して低い数値ではない。但し、今後新型コロナウイルスに対する対策の効果がどう表れるか、また、4月のソウル市長と釜山市長の補欠選挙の結果がどうなるかによって、来年5月の大統領選挙の結果は大きく変わると考えられる。文大統領がK防疫に専念せざるを得ない理由がここにある1
 
1 本稿は、「文政権の支持率低下と新型コロナウイルス対策の関係は?」ニューズウィーク日本版 2021 年 3 月17 日 に掲載されたものを加筆・修正したものである。
https://www.newsweekjapan.jp/kim_m/2021/03/post-35.php

生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中(きむ みょんじゅん)

研究領域:社会保障制度

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴

プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
       東アジア経済経営学会理事
・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)

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