福島原発事故から10年、「こころの減災」への鍵 (3)―損失回避―

2021年03月12日

(岩﨑 敬子) 保険会社経営

■要旨

災害は偶然に発生し、外生的に人々が持つさまざまな財を変化させることで、行動経済学の重要な理論の1つである損失回避を検証する自然実験の状況になることが考えられる。そして、災害下での損失回避の検証は賠償政策を含めて、災害復興政策に重要な政策的な示唆をもたらす可能性がある。本稿では、筆者らが行ってきた福島県双葉町の住民を対象とした継続的なアンケート調査において、その分析から浮かび上がってきた「こころの減災」への3つの鍵(ソーシャル・キャピタル、損失回避、現在バイアス)のうち、2つ目の鍵である、損失回避に注目する可能性について説明する。具体的には、損失回避の概念及びその実証や課題と、災害下の喪失とこころの関係に関する実証研究とその課題の概要を紹介した上で、筆者らが福島県双葉町のデータを用いて行った損失回避の実証分析の結果を紹介する。

■目次

1――はじめに
2――損失回避とは
3――損失回避の実証研究
4――災害下における喪失とこころの関係に関する実証研究
5――双葉町のデータで示される災害がもたらす損失回避的な影響

保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子(いわさき けいこ)

研究領域:保険

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴

【職歴】
 2010年 株式会社 三井住友銀行
 2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
 2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
 2021年7月より現職

【加入団体等】
 日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
 博士(国際貢献、東京大学)
 2022年 東北学院大学非常勤講師
 2020年 茨城大学非常勤講師

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