ブラジルGDP(2020年10-12月期)-前年同期比▲1.1%まで回復

2021年03月04日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:10-12月期は前期比3.2%と回復が続く

3月2日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2020年10-12月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は▲1.1%、市場予想1(同▲1.6%)より上振れ、前期(▲3.9%)からはマイナス幅を縮小した(図表1・2)
前期比伸び率(季節調整値)は3.2%、予想(同2.8%)より上振れ、前期(同7.7%)から伸び率は減速した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:製造業の成長が回復をけん引

10-12月期の実質GDP伸び率は前期比3.2%(季節調整値、年率換算13.3%)と7-9月期(前期比7.7%)に続き2四半期連続の増加となった。前年同期比では▲1.1%(未季節調整値)となりほぼコロナ禍前の水準まで戻したことになる。暦年の成長率は20年で▲4.1%(19年は1.4%)となった。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が3.4%(前期:7.7%)、政府消費が3.5%(前期:1.1%)、投資20.0%(前期:10.7%)、輸出が▲1.4%(前期:▲2.0%)、輸入が22.0%(前期:▲9.6%)となった。輸出入を除いた主要項目は7-9月期に続いてプラスを維持し、特に投資の伸び率が高かった。前年同期比(未季節調整値)を見ると、個人消費▲3.0%、政府消費▲4.1%、投資13.5%であり、個人消費と政府消費はマイナス圏にあるが投資はコロナ禍前と比較しても大幅なプラスを記録している。なお、輸出入では輸出が▲4.3%、輸入▲3.1%であり、いずれもコロナ禍前の水準は割っている。10-12月期は投資が大きくけん引した形と言える。

次に産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると、大分類では「第一次産業」を除く「第二次産業」および「第三次産業」が前期比でプラスとなった。「第二次産業」は鉱業や建設業などは前期比マイナスだったが、製造業が5.0%となり成長をけん引した。製造業は前年同期比でも4.9%まで回復しており、「第二次産業」全体でもコロナ禍前を水準に戻している。「第三次産業」では金融業を除く産業が前期比プラスとなった。ただし、前年同期比では「その他(専門サービス、生活関連サービス、娯楽等)」(前年同期比▲9.4%)、「運輸」(同▲4.3%)のマイナス幅は依然として大きく、これらの産業活動はコロナ禍前と比較して低水準に留まっていると言える。その結果、「第三次産業」全体でも前年同月比はマイナスとなっている。
GDPの水準を時系列で見ると、需要別では、輸出の落ち込みが限定的となるなか、個人消費や投資の反発がGDPを押し上げている(図表4)。産業別には第二次産業が2015年以来となる水準まで達している(図表5)。

10-12月期のブラジル経済は回復が続いたが、足もとでは変異株の流行などにより新型コロナウイルスの新規感染者数が多い状況が続いている。また、インフレ率は低いものの金融市場ではレアル安が進んでおり金融緩和余地は小さい。ブラジル経済の先行きについては予断を許さない状況が続くと見られる。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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