フィボナッチ数列は、多くの興味深い性質を有している。以下にいくつかの例を挙げておく。
(その1)(初期値 (F0 = 0, F1 = 1) に依らずに)フィボナッチ数列の隣接2項の商は黄金数 φ に収束する。
これについては、研究員の眼「
黄金比φについて(その1)-黄金比とはどのようなものなのか-」(2020.11.10)で述べた。
(その2)自然数 p, q の最大公約数を r とすると、Fp と Fq の最大公約数は Fr となる。
この性質の特殊なケースとして、連続する2つの数は互いに素であることより、「連続するフィボナッチ数は互いに素である。」といえる。
F
nとF
n-1が共通の約数p≥2を有するとすると、F
n=mp、F
n-1=np と書けることになることから、その漸化式より、
F
n-2=F
n-F
n-1=(m-n)p
となり、F
n-1とF
n-2も共通の約数pを有することになる。
これを繰り返していくと、結局F
1とF
2も共通の約数pを有することになり、これは明らかに矛盾する。
(その3)フィボナッチ数の累和や累積等については、多くの関係式が成立している。そのうちのいくつかの例を挙げると、例えば以下の式が成り立つ。
(1) F1 + F2 + F3 + … + Fn = Fn+2 − 1
(2) F1 + F3 + F5 + … + F2n−1 = F2n 又は F3 + F5 + … + F2n−1 = F2n-1
(3) F2 + F4 + F6 + … + F2n = F2n+1 − 1
(4) F12 + F22 + F32 + … + Fn2 = Fn Fn+1
(1)は、(2)と(3)が証明されれば、2つを足した結果として明らかなので、(2)を証明すると
F
2n=F
2n-1+F
2n-2=F
2n-1+F
2n-3+F
2n-4=・・・
=F
2n-1+F
2n-3+・・・+F
5+F
3+F
2=F
2n-1+F
2n-3+・・・+F
5+F
3+F
1
同様にして、(3)についても、以下のように証明される。
F
2n⁺1=F
2n+F
2n1-=F
2n+F
2n-2+F
2n-3=・・・
=F
2n+F
2n-2+・・・+F
4+F
2+F
1=F
2n+F
2n-2+・・・+F
4+F
2+1
(4)については、帰納法で証明できる。
n=1 の時は、F
12=1、F
1F
2=1 となるので成り立つ。
nの時に成り立つとすると、(4)の両辺にF
n+12 を加えて
F
12 + F
22 + F
32 + … + F
n2+F
n+12 = F
n F
n+1 +F
n+12
= F
n+1(F
n+1 +F
n+1)=F
n+1F
n+2
となって、n+1でも成り立つ。
(その4)任意の正の整数は、1つ以上の連続しない相異なるフィボナッチ数の和として一意に表現できる(これは、ベルギーの数学者エドゥアール・ゼッケンドルフ(Edouard Zeckendorf) に由来して、「ゼッケンドルフの定理」と呼ばれる)。
まずは、「任意の正の整数は、1つ以上の連続しない相異なるフィボナッチ数の和として表現できる」ことを帰納法で示す。
n=1の時は、明らか
nまで成立するとして、(n+1)以下の最大のフィボナッチ数をFkとする。
(n+1)-F
k=0の時は、n+1=F
k となることから、表現可能
(n+1)-F
k≠0の時は、n+1-F
kは表現可能なので、n+1=(n+1-F
k)+F
k も表現可能
さらに、n+1<F
k+1=F
k+F
k-1 より、n+1-F
k<F
k-1 となることから、上記のn+1表現にF
kと連続するF
k-1は使用されない。よって、n+1でも成り立つ。
次に、一意性を示す。
仮に、nに異なる2つの表現があるとした場合、双方に含まれるフィボナッチ数から共通するものを差し引いたものから、最大のフィボナッチ数をF
kとする。この時、F
kを含まない表現は、全てF
kより小さいフィボナッチ数の連続した和で表されていることになるので、上記の(その3)(2)及び(3)の性質(F
1=F
2からF
1とF
3は連続している)より、その総和はF
k未満となってしまい、矛盾する。
(その5)以下の関係式が成り立つ
ここで、F
11=89 である。上記の関係式は、この1/F
11 は、全てのフィボナッチ数を小数点以下一桁ずつずらして得られる数値の総和として表現されるということである。具体的には以下の通りである。
1/89=0.011235955⋯⋯⋯
=0.01+0.001+0.0002+0.00003+0.000005+0.0000008+0.00000013+0.000000021⋯⋯⋯
何とも不思議な関係であると思わないだろうか。
(その6)フィボナッチ数の逆数を全て足し合わせると収束する( André-Jeanninの定理)。
この収束値(逆フィボナッチ定数)は無理数である。
これについても比較的簡単に証明できるが、ここでは割愛させていただく。
なお、フィボナッチ数列には、以下のような性質もある(さらに、一般化可能だがここでは特殊なケースだけを示している)。
(その7)10個の連続するフィボナッチ数は、必ず7番目の数の11倍となる。
則ち、全てのnに対して、