日本の宿泊者数は、緊急事態宣言が発令された後の4月第2週に前年同期比▲94%まで落ちこみ、5月25日に宣言が全国で解除されるまで同▲97%~▲99%で推移した(図表 2)。四連休が始まる前日の7月22日にGo Toトラベルが開始されたことで、7月第3週の前年同期比▲69%から7月第4週の同▲45%に改善した。また、宿泊者属性別で見ると、7月第4週は「夫婦・カップル」が前年同期比+4%(前週の前年同期比▲57%)、「家族」が同▲64%(同▲80%)、「一人」が同▲65%(同▲71%)となった。その後は一旦反落したものの、8月第2週時点では、全体で前年同期比▲56%、そのうち「夫婦カップル」は同▲40%、「一人」は同▲44%、「家族」は同▲60%となっている。このように、宿泊業は依然として厳しい状況にあるものの、Go To Travelキャンペーンが、「夫婦・カップル」や「一人」の少人数の旅行を下支えしていることが示唆される。
また都道府県ごとに、都道府県内外からの宿泊者数を確認すると、都道府県内からの宿泊者が先行して回復していることがわかる。例えば、2020年7月の北海道の宿泊者数は、道外が前年同期比▲87%の減少となるなか、道内は同+28%の増加となった(図表 3)。ただし、Go To トラベルキャンペーン4から除外された東京は都外からの宿泊者数が前年同期比▲93%、都内からが同▲68%と、都内外からの宿泊者が双方とも低迷している。このように、Go To トラベルキャンペーンの恩恵を受けている地域においては、近距離の旅行から回復していることが示唆される。
4 佐久間(2020)「Go To Travelによるワーケーションのすすめ-感染防止と両立したウィズ/アフターコロナの働き方を体験する旅を」、研究員の眼、ニッセイ基礎研究所、2020年7月14日 5 水野・大西・渡辺(2020)では、各都道府県の4月19日の自粛率は同時点の感染者数の対数関数に従うことを示している。同先行研究では4月19日までの「累積感染者数」、本稿では2020年7月の「新規感染者数」を説明変数とした点において厳密には異なるが、第一波にあった4月時点の累積感染者数は現在の新規感染者数と概ね同様の意味合いを持つと考えている。 6 日本経済新聞(2020)
3――おわりに
3――おわりに
国内における宿泊者数は緊急事態宣言下の5月を底に緩やかに回復しているものの、宿泊業は依然として厳しい状況に置かれている。ただし、V-RESASが提供するオルタナティブデータをもとにした分析によると、(1)新規感染者数の少ない都道府県において、(2)夫婦・カップルや一人の少人数、(3)都道府県内の近距離、のセグメントがGo To トラベルの恩恵を受けて宿泊者数がやや回復し、健闘していることがわかった。この近隣エリアでの少人数での旅行は、ウイズコロナ時代の旅行スタイルの一つとされ、星野リゾートが「マイクロツーリズム」7として提唱しているものである8。