2|分析方法
回答者の健康状態を示す指標は、既往歴と通院歴、心理的ストレス、健康行動の有無、自覚症状の数と日数、自覚症状が仕事に影響を及ぼしている場合の生産性、ヘルスリテラシー、主観的健康感とし、勤務先が従業員の健康増進に力を入れているかどうかで回帰分析を行った。
(1) 既往歴と通院歴
生活習慣病既往歴(「脳卒中(脳出血、脳梗塞等)にかかっているといわれたり、治療を受けたことがある」「心臓病(狭心症、心筋梗塞等)にかかっているといわれたり、治療を受けたことがある」「慢性の腎不全にかかっていると言われたり、治療(人工透析)を受けたことがある」のいずれかで「はい」と回答)、および通院歴(「この1年間に、同一のケガや病気によって14日以上通院した」)を使った。
(2) 心理的ストレス(K6スコア)
本稿では、K6スコアを使用し、過去1か月間に「神経過敏だと感じましたか」など6つの質問に対して、「いつも(4点)」から「まったくない(0点)」までの5段階の回答の点数の和が5点以上の場合を心理的ストレスがあるとして1、そうでない場合を0とした。
(3) 自覚症状の有無
「慢性的な疲労」や「眠れない」「眼精疲労」など、「その他」を含めて24項目あげ、過去3か月間で自覚症状としてあてはまる項目の個数を使った。1つもあてはまらない場合は0とした。また、その自覚症状が仕事に影響を及ぼしていると感じている人に対しては、過去3か月間でもっとも仕事に影響を及ぼした自覚症状を感じた日数を尋ねた。さらに、その時の生産性を(1-質の低下(%))×(1-量の低下(%))で算出した。
(4) ヘルスリテラシー
ヘルスリテラシーは、健康や医療に関する情報を入手し、理解し、評価し、活用する力と説明され、ヘルスリテラシーが不足すると、健康維持や増進に向けた行動が継続しない等の望ましくない状態が起こりうる。本稿では、日本人の就労者を対象に開発された石川らによる尺度(5項目)の合計点を使った。
(5) 主観的健康感
「自分は健康だと思うか」という質問に対して、「とてもあてはまる(4点)」から「まったくあてはまらない(1点)」の4段階で尋ねた結果を使った。
(6) 健康行動・生活習慣
健康診断を受けているか(1年以内に受けている人を1、受けていない人を0)、喫煙有無(現在喫煙している人を1、それ以外を0)、運動習慣(30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施している人を1、それ以外を0)、過度な飲酒
3(1日当たりの純アルコール摂取量が、男性で40g以上、女性で20g以上の人を1、それ以外を0)とした。また食生活が乱れがちだと感じている人を1、そうでない人を0とした。
なお、健康状態は性、年齢、業種、勤務先の情報(公務員、および企業規模)のほか、未既婚、居住地(都道府県、および居住地の規模)、年収といった基本属性のほか、健康状態に影響があると思われる時間および経済的な余裕、日頃からの体力有無を調整した。主な変数の概要は、巻末に示す。使用した変数には、多重共線性がないことを確認している。
3 厚生労働省「健康日本21(第二次)」で生活習慣病のリスクを高めるとされる飲酒量
2―― 回帰分析の結果