コロナ拡大ペースの変化でドル円は不安定化へ~マーケット・カルテ5月号

2020年04月21日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

ドル円では3月中旬から下旬にかけて大幅な円安ドル高が進行したが、以降一服し、4月に入ってからは107円台から108円台での落ち着いた展開となっている。資金繰り懸念に伴う世界的なドル需要の高まりに対し、FRBが未曽有のドル供給で応じたことで、ドル需給のひっ迫が和らいだためだ。足元も107円台半ばで推移している。

米国では新型コロナウイルスの感染拡大にピークアウトの兆候がみられる。まだ予断を許さないものの、今後はピークアウトが明確化することでドルの余剰感が台頭し、ドル安圧力が強まる可能性が高いと見ている。一方、日本では感染拡大が収まる気配がないことから、今後もリスクオフの円買いが誘発されやすい。従って、この先、ドル円は一旦円高ドル安に振れるとみている。ドルの余剰感が解消された後は、米国経済の回復期待でドルが買い戻される局面が到来すると予想するが、3か月後の水準は現状よりも若干円高ドル安に留まるとみている。ただし、もし逆に米国で感染がぶり返すことになれば、再びドル需要が高まることで円安ドル高が進みかねない点には留意を要する。

ユーロ円は、今月に入って世界的な新型コロナ拡大に伴うリスクオフの円買いや、域内経済指標の悪化を受けたユーロ売りによってやや円高ユーロ安が進み、足元では116円台半ばにある。米国同様、欧州でも感染拡大が鈍化しつつある。ユーロはこれまで感染拡大に伴って売られてきただけに、今後ピークアウトが明確化すれば、素直にユーロ高要因になるだろう。一方で、引き続きリスクオフの円買いも予想されることから、ユーロ高と円高の綱引きとなり、3か月後のユーロ円は現状比で横ばい程度と予想している。

長期金利は、今月に入って、新型コロナ対策に伴う国債増発方針が金利上昇圧力になる一方で、日銀の国債買い入れや景気の先行き懸念が低下圧力となる形で0.0%付近での推移となり、足元も0.01%にある。今後も追加対策による国債増発が予想されるが、日銀と景気懸念が金利上昇を抑制する形が続くことで、3か月後の水準は現状比で横ばい圏になるとみている。
(執筆時点:2020/4/21)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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