中村 亮一()
研究領域:保険
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3.7.c) SCR標準式の簡易計算
EIOPAには、生命保険とSLT保険の保険引受リスク・モジュールの適用と、損害保険の解約リスク・サブモジュールについて報告するよう求められており、保険と再保険会社の適用の相違を特定している。特に、監督上の経験からソルベンシーII指令第109条及び第111条第1項(l) に規定する追加的な簡易計算の必要性が指摘されている分野について報告を求め、必要に応じて関連する方法を提案する。
3.16.比例と臨界値
EIOPAは、ソルベンシーIIの枠組みの適用における比例性が強化されるかどうか、特に以下の分野について評価するよう求められている。
・ソルベンシーII指令2009/138/EC第4条に定義されているソルベンシーIIの適用範囲から除外するための臨界値の妥当性
・規模の限界値、事業の性質又はそのリスクに基づき、枠組みの3つの柱のいずれかに関する一定の要件を免除する可能性
・個々の保険又は再保険会社のSCRの重要な部分を形成するサブモジュールの簡素化された計算に関する規則
EIOPAは、SCR標準式の計算をさらに簡素化することにより、フレームワークにおける比例性を高めるための二つの異なるアプローチを検討している。
・オプション2:重要でないリスクに対する資本要件の簡素化された計算の導入
・オプション3:重要性の低いリスクに対する資本要件の統合的かつ簡素化された計算の導入
4―「第2の柱における比例性」
3.16.比例と臨界値
EIOPAは、ソルベンシーIIの枠組みの適用における比例性が強化されるかどうか、特に以下の分野について評価するよう求められている。
・[..。]
・規模の限界値、事業の性質又はそのリスクに基づき、枠組みの3つの柱のいずれかに関する一定の要件を免除する可能性
主要機能
EIOPAは、次のような状況が比例原則に従って正当化される場合には、それを認めるべきであると提案している。
・主要機能(内部監査機能を除く)と運営機能の組み合わせ
・主要機能の組み合わせ
・主要機能所有者の条件とAMSBメンバーの条件の組み合わせ
特に、新たなパラグラフを委任規則第268条に以下のように追加することができる。
x.内部監査機能を除く主要機能の責任者は、以下の条件が満たされる場合には、運営機能の責任者であってもよい。
(a)会社の事業に内在するリスクの性質、規模及び複雑性の観点から適切なものであること
(b)利益相反の可能性が適切に管理されていること
(c)その組み合わせによって、その人の責任を果たす能力が損なわれないこと
x.以下の条件が満たされる場合、主要機能の責任者は、他の主要機能の責任者になることもできる。
(a)会社の事業に内在するリスクの性質、規模及び複雑性の観点から適切なものであること
(b)利益相反の可能性が適切に管理されていること
(c)その組み合わせによって、その人の責任を果たす能力が損なわれないこと
x.主要機能の責任者は、以下の条件が満たされる場合には、AMSBの構成員であってもよい。
(a)会社の事業に内在するリスクの性質、規模及び複雑性の観点から適切なものであること
(b)利益相反の可能性が適切に管理されていること
(c)その組み合わせによって、その人の責任を果たす能力が損なわれないこと
ORSA
EIOPAは、通常のORSAは全体的なソルベンシーの必要性と、資本要件及び技術的準備金の継続的な遵守のために、年次の頻度でのみ提供されることを提案している。会社のリスク・プロファイルが標準式を用いて計算されるSCRの基礎となる前提から逸脱しているという重要性の評価は、2年毎及びリスク・プロファイルの重要な変化があった場合に提供されるべきである。
特に、ソルベンシーII指令第45条第5項は、次のように修正することができる。
「5.保険及び再保険会社は、そのリスク特性に重大な変化が生じた後、少なくとも毎年、かつ、遅滞なく、第1パラグラフに規定されている評価を行わなければならない。
このパラグラフの第1サブパラグラフからの逸脱として、SCRを計算するために標準式を使用する保険及び再保険会社は、少なくとも2年毎、かつ、そのリスク・プロファイルに重大な変化があった場合には遅滞なく、第1パラグラフのcに規定されている評価を行うことができる。」
さらに、EIOPAは、ORSAの一部であるストレステストとシナリオ分析の複雑性に関して、比例性への明示的な言及を含めることを提案している。
特に、委任規則第262条第2項は、次のように修正することができる。
「第1項に規定する要素は、次の事項を考慮する。
(a)会社が長期的に直面するリスクを勘案するための期間
(b)会社の事業やリスク特性に適した評価・認識基準
(c)会社の内部統制、リスク管理制度及び承認されたリスク許容限度
(d)会社の事業に固有のリスクの性質、規模、複雑さに比例的なストレステストとシナリオ分析の結果」
文書化された方針
EIOPAは、文書化された方針の見直しの頻度に関して、より柔軟性を導入することを提案している。報酬政策はまた、文書化された方針のリストに追加されるべきである。
特にソルベンシーII指令第41条第3項は、次のように修正することができる。
「3.保険会社及び再保険会社は、少なくとも、リスク管理、内部統制、内部監査、報酬及び必要に応じてアウトソーシングに関連した文書化された方針を有しなければならない。これらの方針が実施されることを確実にしなければならない。
これらの文書化された方針は毎年見直されるものとする。保険及び再保険会社は、事業に内在するリスクの性質、規模及び複雑性を考慮して、3年間を上限に、より頻度の低いレビューを行うことが認められるかもしれない。
これらの文書化された方針は、AMSBによる事前の承認を受けなければならず、また、関係するシステム又は領域の重大な変更に鑑みて調整されなければならない。」
AMSB
EIOPAは、会社がAMSBの構成と効果的な運用を定期的に評価することを提案している。
特に、委任規則第258条第6項は、次のように修正することができる。
「6.保険及び再保険会社は、その統治制度の妥当性及び有効性を監視し、定期的に評価し、また、欠陥に対処するための適切な措置をとる。評価は、会社の事業に内在するリスクの性質、規模及び複雑性を考慮して、AMSBの構成、有効性及び内部ガバナンスの妥当性に関する評価を含めなければならない。」
報酬(変動要素の延期)
EIOPAは、委任規則第275条第2項(c)で規定されている変動報酬部分の相当部分の義務的延期の範囲は、会社の規模並びに職員が認識する変動報酬の絶対額及び相対額を考慮して限定されることを提案している。限定された範囲は2019年5月20日の欧州議会及び理事会指令(EU)2019/878の第94条に沿ったものとなる。しかし、銀行業の枠組みにおける臨界値は、保険市場の特性に合わせて調整されるべきである。
変動報酬の延期及び委任規則で定義されている報酬に関するその他のハイレベルの原則に関して、EIOPAは監督上のコンバージェンスを強化することを目的とした意見を最終決定する過程にあることに留意すべきである。EIOPAは、意見書案の公開協議の後、立法の枠組みで報酬に関するより詳細な規定を設ける必要性をさらに評価する。
5―「第3の柱における比例性」
6―まとめ