新型肺炎の感染拡大が韓国経済に与える影響は?

2020年02月07日

(金 明中) 社会保障全般・財源

■要旨
  • 中国湖北省の武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎(以下、新型肺炎)の感染者数が増え続けている。
     
  • 新型肺炎の感染拡大は世界経済にマイナスの影響を与えることが確かである。さらに、事態が長期化すると世界の工場と呼ばれている中国からの部品や素材の調達がつまずき、各国の生産活動が中断される可能性も高い。特に、中国経済への貿易依存度が高い韓国経済が受ける影響は大きいだろう。
     
  • 韓国の民間シンクタンクである「現代経済研究院」は、新型肺炎の感染が韓国国内まで拡大された場合、同期間の外国人観光客数は最大202.1万人、観光収入は2.9兆ウォンまで減少し、韓国経済により大きな打撃を与えると予想した。
     
  • また、新型肺炎の感染が韓国国内まで拡大された場合、消費支出は最大0.4%ポイント減少し、経済成長率は、2020年第1四半期に対前年同期比0.6~0.7%ポイント低下すると推計(年間では対前年比最大0.2%ポイント低下)した。
     
  • 韓国経済の中国依存度はまだ高い。2019年基準で輸出額の25.1%、輸入額の21.3%を中国が占めており、2位のアメリカ(輸出13.5%、輸入12.3%)と大きな差が出ている。サプライチェーンが一国に偏りすぎると、何か問題が発生した際のリスクが大きい。
     
  • 今後韓国政府はリスクを分散し、生産活動への負の影響を最小化するために、中国に偏っているサプライチェーンをより多くの国への分散を目指す必要があるだろう。

■目次

・新型肺炎の感染が拡大
・新型肺炎の感染拡大は韓国経済に「青天の霹靂」
・韓国企業の休業が続出
・新型肺炎の感染拡大が韓国経済に与える影響
・今後の課題

生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中(きむ みょんじゅん)

研究領域:社会保障制度

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴

プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
       東アジア経済経営学会理事
・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)

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