(3)差分の差分法による分析(Difference in Difference Analysis, DID分析)
ある政策を実施する前と政策を実施した後の効果を推計する場合、次のような式により推計することができる。
ここで、 Ytは、政策を実施したことにより影響を受ける変数である。dtは、政策の影響を受ける対象であれば1で、政策の影響を受けない対象であれば0となるダミー変数である。εtは誤差項であり、β0とβ1は推計するパラメーターである。この式による推計結果を用いて、ある政策を実施することによりYが増加したという解釈をすることは可能である。しかしながら、Yが増加した要因が、すべてある政策によるものかどうかは断定できない。例えば、一部の市町村のみある産業政策を実施することにより、該当する市町村の一人当たりGDPが増加したとしても、それがすべて政策の効果であるとは言い切れない。つまり、その効果には政策による効果のみならず、時間が変化することにより発生する外生的要因(time effect)が含まれている可能性もある。そこで、このようなことをコントロールして分析できる差分の差分法を使用することが望ましい。差分の差分法(Difference in Difference Analysis, DID 分析)では、政策の影響を受けるトリートメントグループと、政策の影響を受けないコントロールグループという 2つのグループに分けて分析を行う。つまり、純粋な政策の効果だけを見るために、政策により影響を受ける対象(トリートメントグループ)のみならず、時間が経っても政策の影響を受けない対象(コントロールグループ)を一緒に分析に利用する必要がある。
ここで、本稿では政策効果を見るために、差分の差分法(Difference in Difference Analysis, DID分析)を行った。図表32から図表35までは「第1子から全出生世帯へのお祝い金等給付事業」と「第3子以降の出生世帯に限定した給付事業または第3子以降世帯のみに上乗のあるお祝い金等事業」の政策効果に対して差分の差分法(固定効果モデル)を行った結果である。分析結果を見ると、分析時期を2015年と2016年にした図表32と図表33の分析結果では政策効果に統計的に有意な結果は表れなかった。そこで、政策の効果が出るまでには多少時間がかかることを考慮し、分析時期を2015年と2017年に調整し、分析を行った結果、「第1子から全出生世帯への祝い金等給付事業」を実施している市町村(トリートメントグループ)の出生率が高いという結果が出ており、統計的にも有意であった(図表34)。