原油相場の注目点と見通し~カギを握るトランプ政権

2019年02月01日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
  1. 昨年終盤に急落したWTI先物はやや持ち直したが、足元でも53ドル台に留まっている。今後の注目点と見通しを考える。
     
  2. 原油価格に最も大きな影響を与えるのは原油需給だが、需要は世界経済の動向に左右される。そして、今後の世界経済の動向に大きな影響を与えるのが米中貿易摩擦となる。
     
  3. 原油の供給面で注目されるのは、OPECプラスによる協調減産の履行状況と米政権によるイラン・ベネズエラへの制裁動向だ。また、トランプ大統領によるOPECへの口先介入も注目点となる。昨年4月以降、同氏はOPEC批判を繰り返してきた。米国ではガソリン価格が3ドルを超えると消費マインドに悪影響が及ぶとも言われており、同氏は阻止を狙ったと考えられる。ガソリン価格3ドル接近に相当する原油価格は65ドル前後であるため、60ドルを明確に突破すると、同氏による口先介入が再開される可能性が高い。米シェールについては、今後原油価格が上昇すれば、増産ペースが加速する可能性が高い。
     
  4. 以上、今後の注目材料を挙げてきたが、米中貿易交渉をはじめトランプ政権にまつわるものが多い。見通しとしては、原油需給は今後供給過剰緩和が確認できるだろう。米中貿易交渉は何らかの合意に至る可能性が高く、世界経済の急減速は避けられるだろう。一方、供給面では、OPECプラスの減産が概ね順守されるはずだ。経済成長と政府歳入を原油に頼るサウジは価格上昇を望んでいるとみられるためだ。供給過剰の緩和が確認され、原油価格は持ち直しに向かう可能性が高い。ただし、原油価格が持ち直すと、米国の増産ペースが加速するほか、トランプ大統領の口先介入も再開し、価格抑制に働く可能性が高い。同氏は制裁についても原油価格急騰を招く対応は採らないだろう。従って、原油価格は今後緩やかに上昇するものの、上昇余地は限定的になる。春にかけて持ち直した後も、年末にかけて50ドル台半ばから60ドル強を中心とする推移が予想される。
■目次

1.トピック:原油相場の注目点と見通し
  ・需要面の注目点:貿易摩擦と世界経済
  ・供給面の注目点:協調減産とトランプ政権の制裁・口先介入
  ・見通し:持ち直すが上値は重い、トランプ政権の出方がカギに
2.日銀金融政策(1月):2019年度の物価見通しを大幅に下方修正
  ・(日銀)現状維持
3.金融市場(1月)の振り返りと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)