中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
2018年09月25日
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1.2欧州の枠組み
1.2.1ソルベンシーIIレビュー
ソルベンシーIIは、2016年の始めに発効したが、その枠組みはすでに見直されている(99ページの「保険監督年次大会」の情報欄を参照)。「このような早期に批判的に枠組みを再検討しているという事実は指令で想定されており、それも意味をなしている。」と、保険年金基金監督のFrank Grund CEDは述べている。初期の経験が集まり、一般的な環境が変化した。Grund氏によると、市場価値ベースのアプローチは交渉可能ではない。「しかし調整して改善したい」と彼は付け加えた。1つの例は標準式である。
注釈
保険監督者年次大会
約250の保険会社及び業界団体の代表者が、2017年10月11日にボンで開催された第7回保険監督会議に出席した。このイベントの主なテーマは、ソルベンシーII、保険部門のデジタル化、継続的な規制の開発だった。開会の挨拶で、フランク・グルント(Frank Grund)CEDは、業界の現在の問題と経済状況について報告した。彼は英国で事業運営している保険会社に、ハードBrexitの可能性に対して準備するよう警告した。Grundは、外部へのランオフに関して、BaFinは生命保険会社からの新規申請を受けていない、または通知されていないと強調した。しかし、「将来的にも、ただ単に財務面の観点からだけでなく被保険者の利益を保護する。」と同氏は確認した。ゲスト・スピーカーのDr Nathalie Berger EU委員会のユニット長は、欧州の視点から保険規制の継続的な発展について報告した。
プレゼンテーションの後、業界代表者及び監督当局は、実際にソルベンシーIIにおけるコンフリクトの領域ならびにデジタル化によってもたらされるリスク及び機会について議論した。
1.2.1.1標準式の見直し
欧州委員会は、ソルベンシーIIレビューにおいて2018年2月までに、ソルベンシーIIの実施規定を含む委任規則の様々な要素を検討するよう、欧州保険年金監督局(EIOPA)に要請した。その目的は、ソルベンシーIIにおけるソルベンシー資本要件(SCR)の計算のための標準式を簡素化し、適切な比例性と技術的整合性を備えた監督体制を構築することだった。
EIOPAは、2017年10月に委任規制の改訂に関する最初の一連の技術的助言を欧州委員会に提出した。
11月と12月に2回目のパブリックコンサルテーションを行い、2018年2月28日にEIOPAによって最終的に発表された。第2セットの技術的助言の対象は、ドイツ市場にとって重要で、BaFinが欧州レベルで活発に交渉した多くのSCRトピックで構成されている。
金利リスク
特にマイナス金利を有する低金利環境を適切に反映させるために、金利リスクのための新しい方法論が提案されている。
繰延税金及びリスクマージン
EIOPAは、特に繰延税金資産の減損テストに適用される予定の繰延税金の損失吸収効果に対処するための多数のガイドラインを策定した。リスクマージンについては、資本コスト率に限定されていた。その結果、6%の数字が確認された。
簡略化された標準式
特にカウンターパーティのデフォルトリスク、カタストロフィーリスク、ルックスルーアプローチに関連する標準的な公式を簡素化するための提案
技術的不一致の除去
技術的不一致を解消するための提案は、他の分野の中でも、損害保険料及び準備金リスクモジュールに入れられた。損害保険料及び準備金リスクについては、法的費用保険など一部の事業分野でリスク要因の調整が提案された。さらに、保険料リスクのボリューム尺度に関しては、複数年契約のボリューム尺度に存在する保険料ギャップが満たされることが示唆された。
BaFinは改訂をサポートしている
BaFinは標準的な公式の改訂を歓迎する。ソルベンシーIIの規定に従うドイツ(再)保険会社が協議に参加し、データ照会にも参加するよう促した。ドイツの保険事業の特色に再び注目させ、ドイツ市場の重要性に応じて、これらが考慮されることが、標準式の最初のレビューにおいて重要である。
4―ソルベンシーIIによるSCR比率等の結果数値の概要