EIOPA(欧州保険年金監督局)は、2017年12月21日に、「長期保証措置と株式リスク措置に関する報告書2017(Report on long-term guarantees measures and measures on equity risk 2017)」1(以下、「今回の報告書」という)を公表した。この報告書は、2016年12月26日に公表された「長期保証措置と株式リスク措置に関する報告書2016(Report on long-term guarantees measures and measures on equity risk 2016)」(以下、「前回の報告書」という)に続く、2回目の報告書である。これらの報告書を通じて、EU(欧州連合)のソルベンシーIIにおける長期保証(Long-Term Guarantees:LTG)措置及び株式リスク措置についての保険会社の適用状況やその財務状況等に及ぼす影響が明らかにされている。
前回の報告書については、同時に公表された「2016 EIOPA保険ストレステスト報告書(2016 EIOPA Insurance Stress Test Report)」の内容と合わせて、2017年1月に4回のレポート(以下、「前回の報告書のレポート」という)で報告した。今回は、そのレポートの更新という意味合いで、EIOPAの今回の報告書に基づいて、ソルベンシーIIにおける欧州保険会社のLTG措置や株式リスク措置の実態について、その概要を報告する。
(1)リスクフリー金利の補外(Extrapolation of the risk-free interest rates:UFRの使用)
技術的準備金を算出する際に使用するリスクフリー金利について、市場データ等が得られない超長期の値については、補外が必要となる。この補外の手法として、UFR(Ultimate Forward Rate:終局フォワードレート)を使用する。具体的には、(スポットレートではなく)フォワードレートが終局的に(外部から定められた)一定の水準に向けて収束するとの前提にたって、超長期の金利水準を決定する手法であり、この時に設定される終局のフォワードレート水準がUFRとなる。
(4) リスクフリー金利の移行措置(Transitional on the Risk- Free Rate:TRFR)
ソルベンシーIIの開始後16年間は、(再)保険会社は、リスクフリー金利の移行措置を適用できる。移行措置の下で、会社は保険及び再保険債務の評価のためのリスクフリー金利への過渡的調整を適用する。過渡的調整は、ソルベンシーIの割引率とリスクフリー金利との差異に基づいている。ソルベンシーIIの開始時に、過渡的調整はその差の100%となる。16年間の移行期間にわたって、過渡的調整はゼロに直線的に縮小される。移行措置は、ソルベンシーIIの開始前に締結された契約に起因する保険及び再保険債務のみに適用される。