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出産育児一時金
健康保険法の制定は古く、1922年4月22日であるが、1923年の関東大震災の影響などもあり、保険給付に関する規定の施行は1927年1月1日にずれ込んだ。
現在の出産育児一時金は、当時、分娩費と呼称されており、健康保険法第1条では、
「健康保険ニ於テハ保険者カ被保険者ノ疾病、負傷、死亡又ハ分娩ニ関シ療養の給付又ハ傷病手当金、埋葬料、分娩費若ハ出産手当金ノ支給ヲ為スモノトス」
と、健康保険が療養の給付と埋葬料、分娩費などの現金給付からなることを定め、第50条で
「被保険者分娩シタルトキハ分娩費トシテ20円ヲ、出産手当金トシテ分娩ノ前後勅令デ定ムル期間1日ニ付報酬月額ノ100分ノ60ニ相当スル金額ヲ支給ス」
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と、分娩費は20円、出産手当金(被保険者が労務に服さなかった期間のうち、分娩前28日、分娩後42日の計70日分が支払われる)
2の日額は、報酬月額の100分の60とすることを定めている。
第50条のうち、「20円」は、1942年2月に「勅令ヲ以テ定ムル額」に改定され
3、勅令(健康保険法施行令)で「30円」とされた
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1948年7月、健康保険法第50条改正と第50条の2新設により、分娩費が被保険者の標準報酬月額の半額(最低保障額1000円)となり、分娩後6か月間支給される月100円の哺育手当金が新設された。
また、従来分娩費は健康保険の被保険者本人(すなわち女性労働者)に対する給付であったが、被保険者の配偶者分娩費(500円)、哺育手当金(被保険者本人と同額)が新設された(第59条の2)
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次いで、1949年4月、哺育手当金が月200円に、配偶者分娩費が1000円に引き上げられた
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1961年6月、被保険者本人の最低保障額が6000円に引き上げられ、哺育手当金は育児手当金と改称、2000円の一時金とされるとともに、配偶者分娩費が3000円に引き上げられた
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1969年8月、被保険者本人の最低保障額が2万円に、配偶者分娩費が1万円に引き上げられた
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1973年9月、被保険者本人の最低保障額、配偶者分娩費が同額の6万円に引き上げられた
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以降、1976年7月、10万円、1981年4月15万円、1985年4月20万円、1992年4月24万円にそれぞれ引き上げられ、1994年4月には、分娩費と育児手当金が統合されて出産育児一時金となり、被保険者本人および配偶者とも定額の30万円となった。
2002年10月、出産育児一時金の対象者が本人および配偶者から被保険者の全被扶養者に拡大された(同時に健康保険法の口語化などの改正が行われ、出産育児一時金の条項は第101条となった)
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2006年10月には、出産育児一時金が35万円に引き上げられた
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2009年1月、出産に関連して発症した重度脳性まひに対する産科医療補償制度の導入に伴い、補償制度の掛金3万円が加算され38万円、2009年10月、42万円に引き上げられ、同時に出産育児一時金の医療機関に対する直接支払制度が導入された
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2015年1月には、産科医療補償制度の掛金が3万円から1万6千円に引き下げられたが、平均的な出産費用の増加を考慮し、出産育児一時金の金額は変更されていない
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