中国経済見通し~成長率は18年6.5%、19年6.2%と鈍化するものの心配は御無用!

2017年11月24日

(三尾 幸吉郎)

■要旨
  1. 中国国家統計局が公表した17年1-9月期の国内総生産(GDP)は59兆3288億元(日本円換算では約1000兆円)となり、実質成長率は前年比6.9%増と16年通期の同6.7%増を0.2ポイント上回った。昨年まで6年連続で前年の伸びを下回ってきたが7年ぶりに上回りそうだ。一方、消費者物価は前年比1.5%上昇と16年通期の同2.0%上昇を0.5ポイント下回っている。
     
  2. 需要別の動きを見ると、消費は長期トレンド(中間所得層の増加に伴うサービス化)、中期トレンド(ネット販売化が消費を刺激)、短期トレンド(小型車減税やバブル抑制など景気対策の拡大・縮小による変動)が17年は3つ揃って上向きだったが、18年には短期トレンドが下向きに転じる。投資は構造改革が進展する中で二極化、構造不況業種(鉄鋼、採掘など)が落ち込む一方、新興産業(IT、自動車など)は勢いを増した。今後は前者のマイナスが後者のプラスをやや上回り小幅減速と見ている。輸出は、世界経済の持続的回復などがプラス要因となるものの、製造拠点を後発新興国へ移転する動きが盛んなため大きな伸びは期待できない。
     
  3. 一方、金融面を見ると、住宅バブルが深刻化する中で、中国政府(含む中国人民銀行)は金融政策の重点を、景気からその副作用(住宅バブルやレバレッジ拡大など)抑制へ移したと見られる。今後想定される米利上げに際しては金融を引き締め方向に調整する可能性がある。
     
  4. 経済見通しとしては、17年の成長率は前年比6.8%増、18年は同6.5%増、19年は同6.2%増と緩やかな減速を予想する。しかし、消費面でも投資面でも新たな牽引役が誕生、今回の減速は景気対策頼み(小型車減税やインフラ投資など)からの脱却を図ることが主因で、経済運営の自由度はむしろ高まるため悲観は必要ない。また、17年の消費者物価は前年比1.6%上昇、18年は同2.7%上昇、19年は同2.3%上昇と予想する。なお、リスクは住宅バブルと考える。
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