1|依頼主に向き合う
これまでにレスキューした建物は50軒。週に2軒ほどのペースだという。電話などで依頼があると、まず、依頼主に詳しく話しを聞く。場所や建物の状況はもちろんだが、家族全員がレスキューすることに同意しているか、レスキューしたものを販売することに同意できるかといったことも確認する。特別に思い出があるものがないかどうかも問いかけ、あれば、優先的にレスキューし、それを材料に何かの品物にしてお返しすることも行う。レスキューは、依頼主一人ひとりに向き合うところから始める。
2|解体業者と良好な関係をつくる
レスキューに行けるのは概ね片道1時間程度までの範囲。電話で確認が取れれば、まず、現場に行き建物の規模を見て、スタッフの人数や必要な車両の大きさを見積もる。その上で解体業者とスケジュール調整を行う。解体作業と重ならないようにするためだ。レスキューは解体業者が入る前に行うことが重要で、重なってしまうと解体業者の作業に支障を来す。それは避けなければならない。先に入ったとしても、解体業者の手間が増えてはいけないので、例えば、解体作業に床があった方がよければ、床板を剥がしていいタイミングを調整する。
レスキューを増やすためにも解体業者との関係を良好なものにしておくことは大切なことだ。
3|次の世代に残したいものをレスキューする
リビルディングセンター・ジャパンは、今のところ重機が必要な柱や梁などの構造材は扱っていない。それ以外の部分を手作業でバラしていく。技術的に難しいこともあるが、大型の梁などは一般の人には扱えないことから、ストックヤードが限られる中で優先度を下げている。
構造材以外であれば何でもレスキューするのでもない。東野さんは、「次の世代に残したいものを基準にレスキューする」と話す。具体的には、ベニヤやプラスチック類は基本的にレスキューしない。無垢の木材や古い金物類、それらに該当する建具、家具などをレスキューする。その基準を依頼主に説明し、現場でジャッジしながら作業を進める。
4|依頼主の気持ちもレスキュー
実は、レスキューには、資源としての古材のレスキューと、依頼主の気持ちのレスキュー、2つの意味がある。
10年前先祖代々続く家を解体した経験があり、その事で夢にうなされるほど、先祖に申し訳ない気持ちを抱え、家を守れなかったことを悔やんでいた人から依頼があったという。今回も事情があって別棟を解体せざるを得なくなった。
しかし、「僕たちを知り、また同じ思いをしたくないのでレスキューに来てほしいということでした。全てをレスキューできる訳ではないのですが、結局その人が最後の最後までその建物と向き合える、そこまでやればご先祖さまに胸を張って会えるという状態まで持っていければよいと考えてレスキューに行ってきました。非常に喜んでくれました」
その人の気持ちもレスキューしたのだ。レスキューを依頼する人は、「僕たちがやっていることに対してしっかりと価値を感じてくれている人が多いような気がします」と東野さんが話す。依頼する人は、古材の救出とそれによる心の救済、そこに価値を感じているのであろう。
4――理念を実現するための取り組み