4|オレンジホールの解体再開発
2016年9月、組合は「問屋町にぎわい創出事業」における借地利用事業者募集要綱を公表した。そこには、老朽化したオレンジホールを解体し、その跡地を活用して新たな賑わいを創出すると記されており、問屋町の活性化に寄与する事業提案を公募する内容になっている。
組合はオレンジホール跡地を、商業施設や文化施設などに開発して運営する事業者に、借地することにしたのだ。2016年12月に応募を締め切り、2017年4月には1社を選定、7月以降の着工を予定している。
オレンジホールは、もともと組合員が卸製品の展示会に活用するために建設されたものだ。組合が利用しないときは一般に有料で貸し出している。たが、近年は利用率が低く、資金を投じて改修しても運営していくのは困難と判断した。既に6月以降の利用予約を停止している。
問屋町の中心に位置し、組合の駐車場や事務所棟を含めた敷地面積約7,000m
2、法定容積率が400%で、前述のとおり区画道路の幅員も広いことから、かなり規模の大きい開発が可能だ。既存ビルのリノベーションで街並みを形成し、にぎわいを創出してきた中で、新築される建物がそこに溶け込むことができるのか。施設の規模や形態もさることながら、そこに導入する店舗は、問屋町ブランドに相応するものになるのだろうか。部外者である筆者も心配になる。
テナント会としてもやはり心配だという。どのような事業提案がなされ、どのような内容の開発を選定するのか、お客さんが利用している組合の駐車場はどうなるのか。
そうした懸念やテナント会としての意向は、小田さんから組合理事に、非公式ではあるが伝えている。しかし今のところそれが事業者選定や開発の中身にどの程度反映されるのか不明だという。
ただ筆者は、「問屋町にぎわい創出事業」は事業者提案だけを意味するものではないという気がしている。なぜなら、事業者募集の趣旨にも、「今後ともこのような商業集積を維持発展させ、周辺地域の利便性の向上や活性化に寄与する魅力的なにぎわい施設を設置する」とあるように、問屋町エリア全体を俯瞰し、さらにその周辺地域を意識した事業提案を求めていると読み取れるからだ。
新たな開発だけでにぎわいを創出するのではなく、これまでの蓄積や他のエリアとの競合関係、マンション住民が増加している最近の動向といった点を踏まえた上で、将来にわたる問屋町の発展を見据えたまちづくりを行う意思を感じる。テナント会や明石さんの問屋町に対する眼差しと共通するものが感じ取れる。
そして、募集要項には、あらためて、「みんなで創るマチ」を組合活動のコンセプトとしたと書かれている。このコンセプトが生きている以上、組合はコンセプトを最も理解した提案を選定するはずである。選定された事業者も問屋町に関わる一員として、みんなが喜ぶまちづくりを行っていくはずだ。問屋町の将来にとって重要な事業であると共に、「モノサシ」の真価が問われる機会になるのかもしれない。