まちづくりレポート|住宅団地活性化なるか!-広島市戸建住宅団地活性化の取り組み

2016年11月29日

(塩澤 誠一郎) 土地・住宅

2|取り組みの背景と経過
毘沙門台団地は開発面積110.9haに2,762世帯、6,921人が暮らす8、市内でも大型の住宅団地だ。1974年から入居が始まり、1980年に毘沙門台小学校区内の町内会、青少年健全育成協議会、老人クラブ連合会などを構成団体とする、毘沙門台学区社会福祉協議会(以下協議会)が設立された。

それから30年近く経過した2009年に、協議会は独自に「福祉のまちづくりプラン」を策定した。プランを検討する中で一番の課題となったのが、ひとり暮らし高齢者の見守りである。高齢者のみの世帯が増え、坂道や階段が多いことから高齢者にとって外出が不便で孤立しやすい環境にある。これに対し、近隣住民のネットワークで見守りを行っていく取り組みを進めた。

2014~2015年には、毘沙門台団地が国土交通省のモデル事業9の対象に選ばれ、増加している空き家を活用し、団地の課題解決に資する取り組みの検討が行われた。その中で、見守りをするだけでなく、ひとり暮らしの高齢者等が集い、一日皆と一緒に過ごせる場を設ける必要性が議論された。そこで既に廃止することが決まっていた市営の消防職員待機住宅を利用する構想が浮上した。

ちょうどその時期に市による住宅団地活性化の説明会が行われ、これに協議会会長が出席して、直ちに"まるごと元気"住宅団地活性化補助金を活用することにして、役員会に諮り申請することにした。

改修費の当初見積額は300万円であった。協議会は赤い羽根共同募金の「地域活動支援プロジェクト(地域テーマ募金)」10を活用し、団地住民に呼びかけて募金活動を行い143万円の寄付を得た。

これに"まるごと元気"住宅団地活性化補助金の60万円を加え、足りない分は団地内で営業する施工業者に協力してもらうことで賄った。こうして、2016年4月から改修工事が始まり、6月25日に「毘沙門台ふれあいセンター絆」としてオープンした。
 
8 2015年12月現在。
9 「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」実施主体は、特定非営利活動法人住環境デザイン協会
10 広島県共同募金会が実施する共同募金活用事業。地域におけるさまざまな生活課題等を解決するため、寄付者が使い道を指定できる使途選択募金で、プロジェクトを実施する団体が活動の必要性をアピールしながら募金への協力を呼びかける。集めた募金は共同募金会を通じて団体に助成するものである。

社会研究部   都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任

塩澤 誠一郎(しおざわ せいいちろう)

研究領域:不動産

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

経歴

【職歴】
 1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
 2004年 ニッセイ基礎研究所
 2020年より現職
 ・技術士(建設部門、都市及び地方計画)

【加入団体等】
 ・我孫子市都市計画審議会委員
 ・日本建築学会
 ・日本都市計画学会

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