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金利がある世界での資本コスト

2025年05月02日

(前山 裕亮) 株式

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4――海外投資家の売買状況

このように資本コストが高止まりしていることは、伊藤レポートで言うグローバルな機関投資家と見ることができる海外投資家の売買動向からもうかがえる【図表7】。

海外投資家は、日本株式を2013年から2015年5月こそ大幅に買い越していたが、2015年6月から2018年まで売り越し、それ以降は売り買いが錯綜している。資本コストは、2015年6月以降から2018年にかけて海外投資家の売却に見られるように要求水準が切りあがったと推察される。

5――最後に

5――最後に

TOPIXの予想益回りとTOPIX500構成銘柄の益回りとPBRの逆数から同時推計した資本コストと成長率を確認してきた。日銀の金融政策の変更やそれに伴う長期金利上昇の影響は、日本株式の資本コストに見受けられなかった。グローバルな機関投資家から見ると日本の長期金利が上昇したといっても1%程度、海外と比べるとまだまだ低水準なこともあり、あまり日本株式の資本コストに影響しなかったと思われる。

ただ、その一方で日本株式の資本コスト自体はこの10年で上昇したことが示唆された。ここで2025年3月末時点の米S&P500種株価指数構成銘柄でも、同様に資本コストと成長率を同時推計した。その結果をみると、米国株式についても新型コロナウイルスの影響が大きかった期間を除くと、2018年以降は推計した資本コストが高水準であった【図表8】。グローバルな機関投資家の日本株式に対する資本コストは、米国株式につられる形で要求水準が上昇した可能性があるだろう。

金融研究部   主任研究員

前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)

研究領域:医療・介護・ヘルスケア

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴

【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員
 ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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