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民間医療保険の健全性強化を図るインドネシア-医療保険規制は医療制度の課題を示す-

2025年07月15日

(磯部 広貴) 保険商品

■要旨

インドネシアには国民医療保険があり、全国民(同国で6か月以上で働く外国人を含む)を対象に加入者は原則無料で受診可能である。しかし保険適用となる病院や治療に制限があることから、外国企業の駐在員や一部富裕層を対象として国民医療保険を補完するための民間医療保険も販売されている。
 
本年5月、政府は民間医療保険の健全性強化に向けた取り組みを保険会社に求めると公表した。その規制内容からは、事務効率の低さ、これに乗じての不正請求、さらに過剰診療など同国の医療制度が抱える課題が透けて見える。
 
来年1月から施行予定であったものの、政府は7月になって延期を発表し、民間医療保険に関する規制は今後の医療保険制度全体の強化策に集約されるとした。対象が限られるマイナーな商品であるため自然な流れとも言える。とはいえ民間医療保険に関する規制が映し出した課題は、同じ医療制度を前提とする国民医療保険の課題でもあり、今後の動向を注視したい。

■目次

1――はじめに
2――国民医療保険の現状
3――民間医療保険への新たな規制の公表
4――おわりに(規制の延期)

保険研究部   主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任

磯部 広貴(いそべ ひろたか)

研究領域:保険

研究・専門分野
内外生命保険会社経営・制度(販売チャネルなど)

経歴

【職歴】
1990年 日本生命保険相互会社に入社。
通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。

【加入団体等】
日本FP協会(CFP)
生命保険経営学会
一般社団法人 アフリカ協会
一般社団法人 ジャパン・リスク・フォーラム
2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版

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