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欧州大手保険Gの2023年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-

2024年05月16日

(中村 亮一) 保険計理

(3) 新契約マージン(対PVNBP)等の商品タイプ別状況
PVNBP、NBV及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。

グループ全体での商品タイプ別の内訳は、PVNBPでは、貯蓄が43%(2022年は39%、以下同様)、保障が23%(24%)、ユニットリンクが34%(38%)、NBVでは、貯蓄が33%(28%)、保障が40%(35%)、ユニットリンクが27%(37%)となり、2022年に比べて貯蓄のウェイトが増加し、ユニットリンクのウェイトが低下した。また、保障はPVNBPではほぼ横ばいだが、NBVではウェイトが増加した。

新契約マージンについては、保障が10.16%と高く、ユニットリンクは4.65%、貯蓄は4.38%となっている。2022年との比較では、保障と貯蓄で上昇したが、ユニットリンクでは低下した。
ビジネスミックスでは、貯蓄契約の増加はアジアとイタリアが牽引し、ドイツで一部相殺された。保障の新契約高は、主にフランスに起因(契約認識に関する IFRS 第 17 号の特定要件のため)して、12.7%減少した。ユニットリンクの新契約は、イタリア、アジア等での影響で18.5%減少した。

新契約マージンは、年間平均金利の上昇と、不利なフランスのグループ保障契約の不在により恩恵を受けたが、フランスとイタリアにおけるユニットリンクの収益性の低下により部分的に相殺された。フランスを中心とした金利上昇により、貯蓄利ざやは改善したが、イタリア(新しい戦術的企業保険商品の結果)とドイツ(マージンが低い純粋な資本化商品である投資契約の比重が高いことの影響を受けた)のマイナス業績によって部分的に相殺された。

フランスにおいて、特に不利なグループ保障契約の早期認識の影響で、2022 年との比較がプラスとなったため、保障のマージンが増加した。一方で、ビジネスミックスと管理手数料の増加により、ユニットリンクのマージンは減少した。

PVNBPでの構成比を国・地域別に見た場合、イタリアでは、貯蓄が69%と高く、ユニットリンクが25%となっているのに対して、保障はわずか6%となっている。一方で、中東欧では、保障が68%と高く、ユニットリンクが25%であるのに対して、貯蓄は6%となっている。地中海・南米は中東欧と同様に保障の構成比が高いが、アジアでは貯蓄の構成比が高くなっている。
4|Aviva
(1)全体の状況
2023年の新契約価値(VNB11は、2022年に比べて4.8%増加して、874百万ポンドとなった。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2022年に比べて0.1%ポイント低下して、2.3%となった。

新契約保険料現在価値(PVNBP)は、割引率の上昇の影響を受けて、個人年金の販売が好調だったことから、2022年に比べて9.0%増加して、37,546百万ポンドとなった。
なお、2023年の新契約によるソルベンシーIIの自己資本への影響額は461百万ポンドで、VNBの874百万ユーロとの差異は、契約境界制限(新契約、既存契約の更新・追加)で+25百万ポンド、ソルベンシーIIの自己資本の範囲内にない契約で▲182百万ポンド、税金その他で▲256百万ポンドとなっている。
 
11 Avivaは、VNBについて、以下のように説明している。
「VNB は、期間中に新契約の計上を通じて生み出された株主への付加価値であり、ソルベンシーIIの前提とリスク許容量を反映しており、保有契約と新契約の間の相互作用の影響を含む、当期に計上された生命保険契約から生じるソルベンシーIIの自己資本の増加として定義され、以下のように調整される。
・ソルベンシーIIに基づく契約境界制限の影響を取り除く。
・ソルベンシーIIの自己資本の範囲内にない契約を含める(例: 英国の損保リテール契約及び英国のエクイティリリース)。
・税総額、非支配持分ベース及びその他の差異を反映する。」
なお、年金については、VNBの手法が 2023 年に変更され、目標価格資産構成と目標再保険(実際の再保険が実施されていない場合、実際の資産構成と再保険ではなく)を使用するようになった。改訂された APM(Alternative Performance Measure:代替評価指標)は、資産形成のタイミングの違いや一時的な再保険ギャップによる新契約価値の歪みを回避できるため、より有用であると考えられている。
(2) 新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別の状況内訳
PVNBP、VNB及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、次ページの図表の通りとなっている。

PVNBPは、全ての商品タイプで増加したが、例えば、年金・エクイティリリースにおいては、高い金利環境下で、エクイティリリースの販売がほぼ半減したものの、個人年金が17%増加したことから、13.6%増加した。

VNBは、保障・医療が減少したものの、年金・エクイティリリースや貯蓄・退職での増加により、全体でも4.8%増加した。

新契約マージンは、保障・医療や国際で低下し、他の商品でもほぼ横ばいないしは若干の低下であったことから、全体でも2.4%から2.3%に0.1%ポイント低下した。
5|Aegon
(1)全体の状況
2023年の新契約価値(NBV12は、2022年に比べて、8.2%増加して、581百万ユーロとなった。このうち、IFRS新契約価値は11.1%減少して328百万ユーロ、MCVNB(Market consistent value of new business)は51.5%増加して253百万ユーロとなった。
 
12 Aegonは、NBVについて、以下のように説明している。
「NBVは、IFRS新契約価値とMCVNBの合計。IFRS新契約価値は、再保険及び税引後の新契約CSMと新たな不利な契約の合計として計算される。」
(2) 新契約価値(NBV)の地域別状況
新契約価値(NBV)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

各国・地域でのNBVは(オランダ以外では)増加した。NBVでは米州が7割超を占めており、その位置付けが極めて高くなっている。
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