2025年11月13日、Googleが特定のサイトを意図的に検索結果の下位に配置している可能性があるとして、このことがDigital Markets Act(デジタル市場法、以下「DMA」)違反に該当するかどうかについて調査開始することを欧州委員会は公表した
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Googleが導入しているサイト評価濫用対応方針(site reputation abuse policy)では、Googleは、商業パートナー(commercial partners)が提供する商品紹介等のコンテンツを含むニュースサイトなど、いわゆる"媒体社"のページを検索結果で下位に配置(demote)する方針を導入している。Googleはこの取り扱いを検索結果の不当な操作に対処するためのものと主張している。
欧州委員会はこの対応方針、および検索結果での実際の具体的取扱いが、媒体社が合法的な事業活動を行うこと、イノベーションを図ること、および第三者と協調する自由を阻害していないかについて調査することとした。
DMAについて簡単に解説すると、
先のレポートで解説した通り
2、欧州域内での"contestability(競争機会の確保)"を目的とした規則である。日本の独占禁止法に該当するEU機能条約101条、102条で禁止される私的独占行為などを、事前に防止するための規則として制定されている。本規則は各国での立法等を必要とせず、EU域内に直接適用されている。Google検索は2023年9月6日に欧州委員会からDMA適用対象プラットフォームとして指定され、2024年3月7日以降、DMAの全面適用を受けている。
そして、本事案に関してはDMA6条5項と6条12項の適用の是非が調査される。
DMA6条5項は、指定プラットフォームを運営する提供者(これをDMA上、Gatekeeper(以下、「GK」)と呼ぶ)が、「GK自身によって提供されるサービスや製品に関するランキングと、それに関連するウェブサイト索引付与と巡回(indexing and crawling)について、類似する第三者のサービスや商品より有利に取り扱ってはならない。GK はランキング付与等にあたって透明性、公平性および非差別的条件を適用しなければならない」とする。本条の前半部分は自社を検索結果で優遇してはならないとするものだが、後半は一般的に事業者間で差別せず、透明で公平・非差別的な検索結果表示を行うべきことを要請している。
もうひとつのDMA6条12項は、GKは「ビジネスユーザーに対して…オンライン検索エンジン…へのアクセスについて公平、合理的かつ非差別的な一般条件を適用しなければならない」とする。事業目的での利用者に対して公平なアクセスを保証する規定である。
今後はGoogleの対応方針について、(1)商用コンテンツを掲載するウェブサイトが検索上位に表示されることで生じる可能性のある弊害、(2)その弊害に対するGoogleの対応方針の合理性、について調査される。
ところで日本ではスマートフォン競争促進法がDMAに類似する法令として施行予定である
3。検索エンジンに対する規定もある(9条)が、禁止される行為としては「当該指定事業者(その子会社等を含む。)が提供する商品又は役務を、正当な理由がないのに、これと競争関係にある他の商品又は役務よりも優先的に取り扱ってはならない」とするものである。これは、前述のDMA6条5項前段(自社サービスの優遇禁止)に相当する。すなわち、本件はGoogle(子会社等を含む)自体を優遇する行為ではないため、スマートフォン競争促進法の規制の対象とはならない。
結論としてはこのようになるが、デジタル社会の基盤である検索ランキングが日本のように限定的な優遇禁止でよいのかは、今後の欧州での展開を踏まえて検討の余地があると考えられる。