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2年連続でのプラス進展となった世界生保市場-ここ数年の不安定な状況から2年連続のプラス進展-低金利に伴う低成長を脱し、安定成長へ

2025年11月18日

(有村 寛) 保険商品

1――2年連続でのプラス進展となった世界生保市場

(図表1)は、Fitch Solutions Group Limited, BMI(以下、Fitch BMI)のデータから集計した世界における生保収入保険料の合計額の推移を示したものである。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気低迷と復調、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とするインフレの到来などにより、ここ数年の世界の生命保険市場は変動を繰り返す、不安定な状況となっていたが、2024年は2023年に続いて対前年4.1%と、2年連続でのプラス進展となった。
また、世界生保市場は、リーマン危機以降の世界的な超低金利環境の影響を受け、低成長を余儀なくされてきた。

(図表2)は、過去10年間(2014年-2024年)における世界の収入保険料の平均増加率を示したものである。この間、損保は平均4.1%成長と順調な成長を遂げているのに対し、生保は1.5%にとどまっており、GDPの平均増加率(3.3%)も下回る水準となっている。

2――低成長からの脱却が予想される世界生保市場

2――低成長からの脱却が予想される世界生保市場

一方、これまで生保市場の成長の妨げとなっていた超低金利環境からの脱却は、生保市場にとって明るい材料と考えられ、上記のとおり、世界生保市場は2年連続のプラス進展となったほか、Fitch BMIによる将来予測においても、2025年-2029年の世界生保市場の平均成長率(5.5%)は、損保市場(5.2%)を上回る成長を遂げる予測となっている(図表3)。
なお、(図表4)は、Fitch BMIのデータに基づく、2024年ならびに2029年の世界生保市場ランキングである1。5年後(2029年)においても、ランキングに大きな変動はない。
以上、世界の生保市場の現状、ならびに将来予測についてみてきた。これまで述べてきたとおり、世界生保市場は、ここ数年の不安定な状況から2年連続でのプラス進展を遂げ、今後についても安定的な成長が見込まれることから、低金利に伴うこれまでの低成長からの脱却が期待されているところとなっている。

一方、米国のトランプ関税や、地政学的要因等を背景に、世界的な不確実性は、パンデミック時並みに高まるとの見方もあり2、予断を許さない状況が続くものと考えられる。

世界の生保マーケットについては、引き続き注視して参りたい。
 
1 なお、小著「世界生命保険マーケット将来予測-2035年収入保険料各国ランキング-今後10年は年平均5%成長」『保険・年金フォーカス』(2025年9月9日)(世界生命保険マーケット将来予測-2035年収入保険料各国ランキング-今後10年は年平均5%成長 |ニッセイ基礎研究所)において、アリアンツによる予測に基づく、2035年における生保収入保険料各国ランキングを紹介している。
2 「Allianz Global Insurance Report 2025」。

保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛(ありむら ひろし)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴

【職歴】
1989年 日本生命入社
1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

2023年~ 大阪経済大学経済学部非常勤講師

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