NEW

消費者物価(全国25年10月)-コアCPI上昇率は25年度末にかけて2%を割り込む公算

2025年11月21日

(斎藤 太郎) 日本経済

■要旨

25年10月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合=コアCPI)は前年比3.0%上昇し、前月から0.1ポイント拡大した。
 
食料(生鮮除く)の伸びが鈍化した一方、宿泊料・携帯電話通信料・自動車保険料などサービス価格の上昇が寄与した。
 
食料(除く生鮮)は前年比7.2%と3ヵ月連続で上昇率が縮小し、先行きも鈍化傾向が続くことが見込まれる。ただし、円安による輸入物価上昇が再び押し上げ要因となるリスクがある。
 
コアCPIは、25年12月に2%台前半まで伸びが鈍化した後、ガソリンの暫定税率廃止と電気・都市ガス代の支援策が重なる26年入り後には2%割れとなることが予想される。


■目次

1.コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント拡大
2.物価上昇品目数は前月と変わらず
3.コアCPI上昇率は25年度末にかけて2%割れへ

1.コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント拡大


 

1.コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント拡大

総務省が11月21日に公表した消費者物価指数によると、25年10月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.0%(9月:同2.9%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:3.0%、当社予想も3.0%)通りの結果であった。

食料(生鮮食品を除く総合)の上昇率は3ヵ月連続で鈍化したが、宿泊料、携帯電話通信料、自動車保険料(任意)の伸びが高まったことが、コアCPIを押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比3.1%(9月:同3.0%)、総合は前年比3.0%(9月:同2.9%)となった。
 
コアCPIの内訳をみると、電気代(9月:前年比3.2%→10月:同3.5%)の上昇率は高まったが、ガス代(9月:前年比1.6%→10月:同0.7%)、ガソリン(9月:前年比0.4%→10月:同▲0.3%)、灯油(9月:前年比6.2%→10月:同5.9%)の上昇率が鈍化したことから、エネルギー価格は前年比2.1%となり、9月の同2.3%から上昇率が若干縮小した。電気・都市ガス代の支援策は昨年も今年も実施されており、補助金額は今年の方が小さかったが、燃料費調整単価が昨年よりも低かったため、電気・都市ガス代の上昇率は前月とそれほど変わらなかった。

食料(生鮮食品を除く)は前年比7.2%(9月:同7.6%)と上昇率が前月から0.4ポイント縮小した。

米類(9月:同49.2%→10月:同40.2%)は5ヵ月連続で上昇率が鈍化した。ただし、上昇率の鈍化は昨年の急上昇の裏が出ているためで、価格水準は2ヵ月連続で前月よりも高まっている。一方、米の関連品目は、すし(弁当)A(9月:前年比5.4%→10月:同5.0%)、すし(弁当)B(9月:前年比15.1%→10月:同14.2%)、すし(外食)B(9月:前年比8.3%→10月:同7.5%)の伸びが鈍化する一方、すし(外食)A(9月:前年比4.0%→10月:同8.0%)、冷凍米飯(9月:前年比10.3%→10月:同14.2%)、は伸びを高めるなど、まちまちな動きとなっている。

外食は前年比4.3%(9月:同4.1%)と4ヵ月ぶりに上昇率が前月から拡大した。
サービスは前年比1.6%(9月:同1.4%)と上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。外食に加えて、宿泊料(9月:前年比5.8%→10月:同8.5%)、携帯電話通信料(9月:前年比13.2%→10月:同14.5%)、家賃(9月:前年比0.3%→10月:同0.4%)などの伸びが高まった。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.16%(9月:0.18%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.60%(9月:1.70%)、その他財が0.48%(9月:0.35%)、サービスが0.76%(9月:0.67%)であった。

2.物価上昇品目数は前月と変わらず

2.物価上昇品目数は前月と変わらず

消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、10月の上昇品目数は400品目(9月は400品目)、下落品目数は83品目(9月は89品目)となり、上昇品目数は前月と変わらなかった。上昇品目数の割合は76.6%(9月は76.6%)、下落品目数の割合は15.9%(9月は17.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は60.7%(9月は59.6%)であった。

3.コアCPI上昇率は25年度末にかけて2%割れへ

3.コアCPI上昇率は25年度末にかけて2%割れへ

食料(生鮮食品を除く)は25年7月の前年比8.3%をピークに3ヵ月連続で鈍化した。帝国データバンクの「食品主要195社価格動向調査」によれば、25年の飲食料品の値上げは2万品目を突破し、24年の12,520品目を大きく上回るペースで増加している。一方、先行き3ヵ月の値上げ品目数は原材料コストの上昇一服を反映し、25年初め頃をピークに頭打ちとなり、増加ペースは前年並みに落ち着いてきている。食料(除く生鮮食品)の上昇率は鈍化傾向が続く可能性が高い。

ただし、ここにきて円安が進行しており、輸入物価の上昇を通じた原材料コストの増加が再び食料品価格を押し上げるリスクがある。
ガソリン税の暫定税率は25年12月末で廃止されることとなった。これに先立ち1リットル10円の補助金は段階的に積み増され、11/13~が15円、11/27~が20円、12/11に現在の暫定率の上乗せ分の25.1円となる。暫定税率が廃止されると、ガソリン価格は27.61円(25.1円+消費税分)低下する。補助金が10円だった11/10時点で1リットル173.5円だったガソリン店頭価格(レギュラー)は、原油価格、為替等が現状水準で推移した場合、暫定税率の廃止によって150円台後半まで低下し、コアCPIは▲0.2%ポイント程度押し下げられる。

電気・都市ガス代の支援策は23年1月以降、断続的(23年1月~24年5月使用分、2024年8~10月使用分、25年1~3月使用分、7~9月使用分)に実施されてきたが、政府は物価高対策として、26年1~3月使用分について、合計7000円程度の補助を行う方針を示している。

消費者物価指数のエネルギー価格は25年10月時点で前年比2.1%の上昇となっているが、25年12月に下落に転じた後、25年度末にかけてコアCPI上昇率に対する寄与度は▲1%程度までマイナス幅が拡大することが見込まれる。

コアCPIは、25年12月に2%台前半まで伸びが鈍化した後、ガソリンの暫定税率廃止と電気・都市ガス代の支援策が重なる26年入り後には2%割れとなることが予想される。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)