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不動産投資市場動向(2025年上期)~日本市場の取引額は高水準を維持。グローバル市場は回復基調を辿るも依然低調

2025年09月18日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

■要旨

不動産市場調査会社MSCIリアル・キャピタル・アナリティクス(以下、MSCI)によると、2025年上期の国内不動産取引額は減少した。セクター別取引額では、オフィスが最も大きく、次いで賃貸マンション、商業施設、物流施設の順となった。また、取引額の増減率(前年同期比)をみると、ヘルスケアやオフィスが増加した一方、データセンターやホテル、賃貸マンション、開発用地は大幅に減少した。

次に、購入額を投資主体別(国内資本/外国資本)でみると国内資本による購入額は過去最高を記録した前年から落ち着きを見せた一方、外国資本による購入額が増加した結果、購入額に占める外国資本の割合は回復した。また、外国資本を国・地域別にみると、引き続き、北米系とアジア系の投資家が大きな比率を占めている

アジア太平洋地域における不動産ファンドの取引額を国・地域別に確認すると、オーストラリア、日本、韓国の占率が高まる一方、東南アジア、香港、中国は低下した。4月以降、米国の関税引き上げに対する懸念から米国への投資資金が他地域に分散する動きがみられるなか、アジア太平洋地域では関税率が比較的高い新興国への投資が減少している。

また、アジア太平洋地域を投資対象とするインフラファンドの資金調達額をみると、2025年上期は日本を対象とする調達額が増加した。

MSCIによると、2025年上期の世界の不動産取引額は増加した。ただし、不動産取引額は2024年上期をボトムとして回復基調にあるものの、依然として過去と比べて低調であり、過去10年間で2番目に低い水準にとどまっている。米国の銀行の不動産向け融資は引き続き厳しい状況にある。また、欧州地域の銀行融資のうち商業用不動産向け新規貸し付けは厳格化の傾向が続いている 。

国内不動産投資市場が堅調に推移するなか、 日本の各都市は引き続き高いプレゼンスを確立している。MSCIによると、アジア太平洋地域における都市別投資額ランキング(2025年上期)では、東京が第1位を維持し、大阪が第7位にランクインした。横浜、福岡、名古屋、さいたま、川崎、京都も上位に入り、投資対象として注目を集めている。

国内では日銀の追加利上げが意識されやすい環境にあるものの、国内不動産市場は国際的に見て低位の金利水準や十分に厚いイールドスプレッド、安定した賃貸需要、高い流動性などを背景に、投資家の取得意欲は堅調である。今後は、日米当局の金融政策やグローバル経済の動向、国内外の資金フローなどに留意しつつ、引き続き不動産取引市場の動向を注視する必要がありそうだ。

■目次

国内の不動産取引動向(2025年上期)
世界の不動産取引動向(2025年上期)
取引上位にランクインする国内の都市が増加。引き続き金利動向を注視

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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