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不動産投資市場動向(2025年上期)~日本市場の取引額は高水準を維持。グローバル市場は回復基調を辿るも依然低調

2025年09月18日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

世界の不動産取引動向(2025年上期)

MSCIによると、2025年上期の世界の不動産取引額は約5,001億ドル(約74兆円)となり、前年同期比で+14%増加した(図表8)。エリア別では、米州が約1,857億ドル(前年同期比+19%)、欧州・中東・アフリカが約959億ドル(同+8%)、アジア太平洋が約2,185億ドル(同+12%)となり、いずれのエリアも前年同期比でプラスとなった。不動産取引額は2024年上期をボトムとして回復基調にあるものの、依然として過去と比べて低調であり、過去10年間で2番目に低い水準にとどまっている。
こうしたなか、米国の銀行の不動産向け融資は引き続き厳しい状況にある。米連邦準備制度理事会(FRB)が実施した融資担当者調査(SLOOS、2025年7月)によると、米国銀行の75%が商業用不動産向け新規融資(非農場・非住宅対象)の基準を「据え置いた」と回答し、18%が「厳格化した」と回答した(図表9)。集合住宅向け融資については11%が「緩和した」と回答するなど一部のセクターでは改善の兆しもみられるが、政策金利の引き下げが先送りされて市場金利が高止まりするなか、不動産取引額の回復が遅れている。

また、ロイターによると、欧州中央銀行(ECB)が実施した欧州地域の銀行融資に関する調査(2025年第2四半期)によると、商業用不動産向け新規貸し付けは厳格化の傾向が続いている2
 
2 新規貸付基準を「厳しくした」との回答は9%であった。

取引上位にランクインする国内の都市が増加

取引上位にランクインする国内の都市が増加。引き続き金利動向を注視

国内不動産投資市場が堅調に推移するなか、 日本の各都市は引き続き高いプレゼンスを確立している。MSCIによると、アジア太平洋地域における都市別投資額ランキング(2025年上期)では、東京が第1位を維持し、大阪が第7位にランクインした(図表10)。上記2都市以外では、横浜(第12位)、福岡(第13位)、名古屋(第14位)、さいたま(第16位) 、川崎(第20位) 、京都(第24位)が上位に入り、東京以外の都市も投資対象として注目を集めている。

国内では日銀の追加利上げが意識されやすい環境にあるものの、国内不動産市場は国際的に見て低位の金利水準や十分に厚いイールドスプレッド、安定した賃貸需要、高い流動性などを背景に、投資家の取得意欲は堅調である。今後は、日米当局の金融政策やグローバル経済の動向、国内外の資金フローなどに留意しつつ、引き続き不動産取引市場の動向を注視する必要がありそうだ。

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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