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鉱工業生産25年7月-自動車中心に下振れリスクが高く、7-9月期は減産の可能性

2025年08月29日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.自動車生産が大きく落ち込む

経済産業省が8月29日に公表した鉱工業指数によると、25年7月の鉱工業生産指数は前月比▲1.6%(6月:同2.1%)と2ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.3%、当社予想は▲同1.9%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲2.5%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比0.8%と4ヵ月ぶりの上昇となった。

7月の生産を業種別に見ると、電気・情報通信機械(前月比1.8%)、電子部品・デバイス(同2.4%)など6業種が前月比プラスとなったが、4月から米国向け輸出に25%の追加関税が課せられている自動車(同▲6.7%)、半導体製造装置等の生産用機械(同▲6.2%)、汎用・業務用機械(同▲4.5%)が大きく落ち込み、生産指数全体を押し下げた。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は25年4-6月期の前期比3.9%の後、7月は前月比▲8.4%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は25年4-6月期の前期比▲2.4%の後、7月は前月比▲2.4%となった。
25年4-6月期のGDP統計の設備投資は前期比1.3%と5四半期連続で増加し、1-3月期の同1.0%から伸びを高めた。高水準の企業収益を背景に設備投資は回復が続いているが、トランプ関税の影響で先行きの企業行動は慎重化する可能性がある。

消費財出荷指数は25年4-6月期の前期比▲0.1%の後、7月は前月比▲1.7%となった。耐久消費財が前月比▲6.7%(1-3月期:前期比▲1.4%)、非耐久消費財が前月比0.6%(1-3月期:前期比▲0.7%)であった。

25年4-6月期のGDP統計の民間消費は前期比0.2%と5四半期連続で増加したが、物価高による下押し圧力が残る中、低めの伸びが続いている。

2.先行きの生産は下振れリスクが高い

製造工業生産予測指数は、25年8月が前月比2.8%、9月が同▲0.3%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(7月)、予測修正率(8月)はそれぞれ▲2.7%、▲0.7%であった。

予測指数を業種別にみると、米国向け輸出に対して25%の追加関税が課せられている自動車を含む輸送機械は7月に前月比▲5.4%となった後、8月が同5.2%、9月が同▲4.9%と一進一退の生産計画となっている。日米関税交渉では自動車の追加関税を25%から12.5%に引き下げることで合意したが、実施時期は未定となっている。関税率の引き下げが遅れることにより自動車生産は大きく下振れるリスクがある。
25年7月の生産指数を8、9月の予測指数で先延ばしすると、25年7-9月期は前期比1.5%となるが、実際の生産の伸びは計画を大きく下回る傾向がある。ちなみに、8月の生産が予測指数から▲3%下振れ(前月比▲0.2%)、9月の生産が予測指数通りの伸び(前月比▲0.3%)となった場合、7-9月期の生産は前期比▲0.5%となる。

4-6月期の生産は、トランプ関税下でも輸出価格の引き下げによって米国向け輸出数量が横ばい圏で踏みとどまったことなどから、前期比0.4%の増加となった。しかし、日本の主要自動車メーカーはすでに米国での販売価格の引き上げに踏み切っており、米国向けの自動車輸出は今後、数量ベースで落ち込むことが予想される。7-9月期は自動車の落ち込みを中心に2四半期ぶりの減産となる可能性があるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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